研究課題/領域番号 |
26850115
|
研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
塩崎 拓平 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 特任研究員 (90569849)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | アンモニア酸化 / アンモニア古細菌 / amoA遺伝子 / 新生産 / アンモニウム塩 |
研究実績の概要 |
本研究は海洋表層における硝化活性の測定法を開発し、それを実海域に適用することで、硝化活性が表層物質循環に与える影響を明らかにし、またその変動要因を解明することを目的としている。硝化活性測定法の開発は初年度に終了し、続いて白鳳丸KH-14-3航海において硝化活性の測定を適切に遂行することができた。本航海では太平洋赤道域から北極に至る海域において、本研究課題の主目的である有光層における硝化とその窒素循環への影響と制御要因を明らかにすることを目的とした。アンモニア酸化活性は観測したほとんどの測点で有光層内で検出された。アンモニア酸化に関わるamoA遺伝子の遺伝子量と発現量を調べたところ、研究海域を通してshallow clade archaeaが主要となっていた。亜熱帯貧栄養海域ではアンモニア酸化が硝酸塩取り込み速度の最大87.4%(平均55.6%)を占めており、硝化が窒素循環に大きな影響を及ぼしていることが示された。一方ベーリング海、チャクチ海浅海域では、アンモニア酸化速度が低いためにその割合は小さくなっており(0-4.74%)、そこでは光環境が硝化を制限していたことが示唆された。浅海域を除くとアンモニア酸化活性の水柱積算値は基礎生産の水柱積算値と正の相関があった。アンモニア添加実験及び微量金属の分布から、この相関関係はアンモニア酸化が基礎生産と同様に微量金属の制限を受けていることが要因になっていることが示唆された。本研究成果はNature Publishing GroupのThe ISME Journalから出版される予定である。また本年度はみらいMR15-03航海の北極海における広域観測において硝化活性の測定を行った。本航海で採取した試料は次年度に測定予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度までに大目標であった硝化の海洋表層物質循環における影響とその変動要因を海盆スケールで明らかにすることができ、またその論文も国際誌に受理されるに至ったため。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度に行われた白鳳丸KH-14-3航海の成果から、北極域は硝化の物質循環に及ぼす影響が複合的な要因によって、他の海域と大きく異なることが示唆された。北極海は夏期、生産性が高くその有機物の分解によってアンモニアが多く発生し、アンモニウム塩として高濃度で蓄積している。本研究では北極海浅海域の硝化活性は光によって制限されているために、アンモニアから硝酸塩への変換が進まず、結果、アンモニウム塩の蓄積が蓄積していると仮説を立てた。本年度のみらいMR15-03航海ではその仮説検証を兼ねており、次年度において、採取したサンプルの分析を行う予定である。
|