研究課題
本年度は海洋の中でも特に近年急激に環境が変化している北極海を対象として、硝化速度の分布と環境変動への応答を調べた。北極海における硝化の研究はこれまでのところ極めて限られており、どのように分布し表層物質循環に関わっているのか明らかでない。また北極海は近年の温暖化による水温の上昇と海氷融解、またそれに伴う海中光量の増加と酸性化が生態系に大きな影響を及ぼすと予測されているが硝化活性にどう影響するかどうかは明らかではないのが現状である。本研究では2015年と2016年の夏季北極海航海において、硝化速度の分布を調べるとともに、光とpHの変化が硝化速度に及ぼす影響について調べた。両年とも硝化速度は同様の鉛直分布を示した。陸棚域(水深<200m)では硝化速度は表面で低く、海底で最も高くなった。海盆域(水深>200m)では硝化速度は表面で低く、200m付近で極大値を持ち、それ以深では低くなった。有光層内における硝化速度の硝酸塩取り込みの割合は最大で52.5%であり、硝化が北極域表層物質循環においても大きな影響を及ぼしていることが示された。光照射実験では陸棚域及び海盆域において、0.1%光量層もしくは100mで採取したサンプルを遮光した系と遮光しない系の2系で硝化速度を測定した。その結果、すべての観測点において遮光しない系は遮光した系に比べて有意に活性が低くなった。酸性化実験では陸棚域では海底付近から、海盆域においては0.1%光量層からサンプルを採取し、二酸化炭素ガスをバブリングした海水を加えることでpHを調整した。その結果、pHが0.228以上低くなった時にコントロールに対して硝化速度は有意に低くなった。これらの結果は海氷融解によってもたらされる環境変化によって北極海では硝化活性が将来的に減少することを示唆していた。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Journal of Oceanography
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The ISME Journal
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http://ocean.fs.a.u-tokyo.ac.jp/shiozakiarticle2.html