研究課題/領域番号 |
26850121
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
若林 香織 広島大学, 生物圏科学研究科, 助教 (20725147)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ウチワエビ / クラゲ / 水産増殖 / 人工餌料 |
研究実績の概要 |
本研究では甲殻類幼生の飼育に最適な人工餌開発のための基礎を確立することを目的としている。本年度はクラゲを材料に用いた人工餌料,およびクラゲを用いないがクラゲのように柔らかい性質(クラゲ様)の人工餌料の作製に取り組み,複数のプロトタイプを準備できた。このうち,数タイプの人工餌料について,ウチワエビ類の幼生が摂餌し,体内に取り込むことを確認した。 脆弱な浮遊生物を長期的に飼育するのは難しいが,本研究において水流を工夫した水槽と水質維持の方法を工夫した浄化設備を組み合わせることで,浮遊生物を長期間維持できるようになった。この水槽を用いてウチワエビ類の幼生を飼育したところ,孵化直後から変態まで同一水槽で飼育できること,従来要した半分以下のコストで維持できることが分かった。ウチワエビ類の増養殖を商業化するには,一度に大量の水槽を省力的に維持する必要がある。今回の成果はそれを実現するための一歩となった。 オーストラリアのカーティン大学との共同研究により,ウチワエビ属(Ibacus)だけではなくウチワエビモドキ属(Thenus)の幼生もクラゲだけを摂食して稚エビにまで成長することが確認された。ウチワエビモドキ属のエビはオーストラリアや東南アジアにおいて高価な水産資源として重宝されている。しかし,近年の乱獲などの影響により,漁獲量や個体サイズが極端に減少していることから,クラゲまたはクラゲ様の人工餌料を用いたウチワエビモドキ属の増養殖も期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウチワエビ類幼生の人工餌料の原型を準備できた。幼生を効率的に維持する水槽も開発した。さらに,クラゲを用いた増養殖が実現する可能性はウチワエビ,オオバウチワエビ,およびウチワエビモドキの3種に広がった。したがって,本研究は計画当初の予定どおり進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在までにウチワエビ類幼生が摂食することを観察できた人工餌料を用いて,幼生の孵化直後から稚エビに至るまでの飼育を試みる。クラゲを与えた場合の幼生の成長・生残と比較することで,人工餌料の質的改善に向けた対応策が見えてくると期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年5月に開催予定の国際シンポジウム(5th International Jellyfish Bloom Symposium)への参加計画を立てたが,開催時期の都合により,参加登録は年度内に,航空券は次年度に購入することになった。そのため,航空券購入に必要な金額を次年度に繰り越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し分は2015年度に計画した国際シンポジウム参加のための渡航費として,2016年の交付金は当該年度に行う人工餌料の作製および給餌に関する実験に全額使用する。
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