本研究では甲殻類幼生の飼育に最適な人工餌料開発のための基礎を確立することを目的としている。最終年度は、幼生が体内に取り込むことのできた人工餌料を用いて幼生の継続的な飼育に取り組んだ。孵化直後の幼生に人工餌料を与えたところ、幼生は餌料を食べ続けることが繰り返し観察されたものの、脱皮をして成長するまでの確認には至らなかった。クラゲ類を継続的に確保できなかったこと、所属が変わり新しく立ち上げた水槽で健全な孵化幼生を得るのに苦労したことなどが原因であると考えている。長期飼育に関する試験は今後も継続する。 また、本年度は形や粘度の異なる人工餌料を作製し、幼生による摂餌の有無を試験した。幼生は平面ではなく必ず角から摂餌を開始した。角のない球状の人工餌料を摂餌するのには特に長い時間を要したことから、球状の人工餌料は適していないと言える。さらに、水中を浮遊しない餌料への遭遇率は極端に低下したことから、人工餌料が幼生と同じ空間を浮遊できるように形と密度を工夫する必要があることが分かった。これらの成果は、過去に行った生きたゼラチン質動物プランクトンを用いた実験の結果に概ね一致した。 人工餌料の原料となるクラゲ類の調査中に、クラゲ類を含む様々なゼラチン質動物プランクトンを利用しながら浮遊するセミエビ類の幼生を観察する機会に恵まれた。観察された複数種のうち、エクボヒメセミエビに関する成果を論文として公表した。
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