研究実績の概要 |
本研究室ではマサバおよびゴマサバを飼育するなかで、高水温期の細菌感染症による斃死率が各魚種で異なることを見出した。本研究では、マサバーゴマサバ表皮における種間で比較が可能なトランスクリプトーム解析の基盤構築を試みた。3ヶ月齢のマサバおよびゴマサバを供試魚として飼育実験を行った。飼育開始から1ヶ月後両種の表皮サンプルをRNA-seqに供した。得られた結果からTrinityおよびTransDecoderを用いて、71,072のマサバコンティグ、52,530のゴマサバコンティグを取得した得られた両種のコンティグ配列およびクロマグロ推定遺伝子をblastプログラムによるreciprocal best matchに供した結果、マサバおよびゴマサバ間で推定されたオーソログとして13,875コンティグ、マサバとクロマグロ間のオーソログとして748コンティグ、ゴマサバとマグロ間のオーソログとして1,652コンティグが得られた。この両種コンティグをヒト、マウスのデータベースに対し相同性検索をおこなった結果、約9割の遺伝子に相同性があった。また、これらオーソログ遺伝子keggパスウェイと対応させたところ、両種とも約1万のkeggパスウェイの情報を付与することができた。オーソログ遺伝子の推定を試みた。さらに、このオーソログ遺伝子に対しblastプログラムによる注釈付けをおこなったうえおよびkeggパスウェイ情報についても付与した。このコンティグを用いて遺伝子発現解析を実施したところ、マサバ、ゴマサバ間で発現量に差のあった遺伝子リストには免疫関連のパスウェイが確認された。今後は、マサバおよびゴマサバを用いた水温別の飼育試験を行い、本研究で作成した種間統一リファレンス配列を利用して、トランスクリプトーム解析を行い、高水温期の斃死率の種間差を規定する分子機構を解明することを目指す。
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