研究実績の概要 |
Nocardia seriolaeの病原遺伝子ノックアウト株を利用した弱毒生ワクチンは、従来の水産用ワクチンで汎用されるホルマリン不活化ワクチンでは予防できなかったノカルジア症に対し、高い感染防御効果を示すことが期待できる。本年度は本菌の病原因子の候補遺伝子を選抜するため、N-2927株(2007年高知県の養殖ブリ腎臓由来の分離株)、及びU-1株(2011年鹿児島県の養殖ブリ腎臓由来の分離株)のゲノムDNAの塩基配列を次世代シーケンサーで解読して、ドラフトゲノムの構築を行った。ロシュ 454 GS Juniorを用いてシーケンス解析を行い、N-2927株では167,713リード、U-1株では166,544リードがそれぞれ得られ、NCBIのSRA(Sequence Read Archive)データベースのIlluminaリードと合わせてde novoアセンブリを行い、Microbial Genome Annotation Pipeline(http://www.migap.org/)で遺伝子のアノテーションを実施した。N-2927株、及びU-1株の重複のない配列の総和は7,758,286 bp、及び7,728,498 bpであり、7,531個、及び7, 777個の遺伝子候補、3個のrRNA遺伝子、63個のtRNA遺伝子がそれぞれ予測された。両株間、及びNocardia farcinicaの全ゲノム配列との比較ゲノム解析から、細胞侵入因子であるmce遺伝子、シデロフォアの一つであるノコバクチンの生合成遺伝子、ポリケチド産生に関わるポリケチド合成酵素遺伝子らをノックアウトの標的候補遺伝子として見出すことができた。現在、これらの遺伝子領域のノックアウト株を作出している段階にある。
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