研究実績の概要 |
河川-河口域-沿岸域の連続する水域において、広塩性魚類はどのように遊泳能力の乏しい生活史段階において分散と滞留を選択しているのか解明することを目指し、本研究では、同時・同所的な分布をもつ遡河回遊魚エツと非回遊性の広塩性魚類アリアケヒメシラウオの河川内分布と仔魚の生物学的特性を明らかにすることを目的として研究を行った。 今年度は、有明海と筑後川において、エツおよびアリアケヒメシラウオの採集調査を実施し、標本の収集を進めた。また、福岡県水産海洋技術センターから提供された1986年から2011年にかけてのエツ卵と仔魚のモニタリングデータを解析した。その結果、卵の分布密度は平均すると河口から10.0 km~12.6 kmの調査定点で6月から7月に高く、仔魚は、卵の出現範囲よりも広い河口から4.3 km~14.7 kmの範囲に一ヶ月ほど遅い7月から8月に出現のピークを持ち、エツは卵から仔魚期にかけて河川内を分散することがわかった。 また、筑後川河口域において、生きたまま入手が可能で、飼育設備を利用することができたエツの人工種苗の継続飼育を行い、ふ化から30日齢までの体サイズと比重の変化について調べた。実験では、計271個体の仔魚をサンプリングし、仔魚の全長±標準偏差はふ化時に4.98 ± 0.09 mm (n = 20)であったものが、30日後には17.05 ± 4.33 mm (n = 21)となった。またその比重は、1.0025 ± 0.0002 (0 day, n = 20)から1.0462 ± 0.0074 (30 day, n = 21)と、個体の成長とともに増加し、ふ化後7日以内の仔魚の比重は海水の比重を上回ることが明らかとなった。
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