本研究では、河口域において遊泳能力の乏しい仔稚魚が,分散・滞留をどのように選択しているか理解することを目指し、採集データ解析、飼育実験、耳石分析を行い広塩性魚類エツの河川内分布、仔魚の比重、走光性、成長、環境履歴について明らかにした。その結果、卵から仔魚にかけてエツは河川内を分散し、河川内に留まる期間の長さには個体差があった。仔魚は昼間に表層に分布し、鰾を小さくして魚体の体積を低下させ流れに対する抗力を減少させることで、下流への移動を抑えていると推察された。また、夜間は運動を停止して鰾の膨満により、沈降を緩やかにすることで滞在深度を維持していると考えられた。
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