研究課題/領域番号 |
26850126
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
稲田 真理 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, 研究員 (50723558)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サイトカイン / マクロファージ遊走阻止因子 / MIF / クルマエビ / 生体防御 |
研究実績の概要 |
エビ養殖において、高密度飼育によるエビの感染防御能力の低下等により、ウイルス病や細菌感染症を主とした疾病が世界各地で発生している。本研究では、エビ類における生体防御と生命維持などの統合的な生体制御機構をサイトカインの側面から明らかにし、これらの遺伝子を早期疾病診断へ応用することを目的とした。 平成26-27年度の2年間で、クルマエビにおけるMIFファミリーを遺伝子、タンパク質、細胞レベルの3項目で解析する。 平成26年度は遺伝子レベルおよび、タンパク質レベルの解析を行った。遺伝子レベルでは、MIFファミリーを同定し、免疫応答を明らかにした。同定したクルマエビのMIFおよびDDTは、120および115アミノ酸残基をコードしていた。立体構造解析において、クルマエビのMIFとDDTは3量体を形成することが予測された。ウイルス病PAVの原因ウイルスであるPRDVおよびビブリオ感染症の原因菌であるVibrio penaeicidaを用いて病原体感染時の遺伝子発現動態を定量解析した。V. penaeicida注射後6時間における血リンパでは、DDTの発現が増加し、注射後24時間では平常時の発現量まで減少した。この結果より、MIFファミリーに含まれるDDTはエビ類において生体防御機構に関与している可能性が示唆された。 また、タンパク質レベルでは、MIFファミリーのリコンビナントタンパク質の作製に成功した。MIFファミリーによる免疫活性については現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は当初の計画に沿っておおむね順調に進展している。 最終目的を果たすために掲げた今年度の目標「エビ類のMIFファミリーに関する基礎的データの構築」を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に沿って、タンパク質レベルの実験においては、MIFファミリーの生理活性およびシグナルトランスダクションを明らかにする。rMIFまたはrDDTを作用後、平成26年度に同定したMIFファミリー受容体遺伝子群のシグナル伝達に関わる可能性がある、i) 炎症反応において重要なNF-κB経路に位置する遺伝子群やサイトカインのシグナル伝達において重要なJAK/STAT経路に位置する遺伝子群などの発現動態を調べる。 細胞レベルの実験においては、病原体感染時におけるMIFファミリー発現細胞集団の測定を行う。平成26年度に作製したrMIFおよびrDDTを用いてMIF、DDTに対する抗体を作製し、特異性を確認する。次に、当該抗体を用いて、MIFおよびDDTの細胞内染色法を確立する。次に、フローサイトメーターを用いて、ウイルスや細菌を感染させたクルマエビにおいて、3種類の血球 (大顆粒球、小顆粒球、無顆粒球) の細胞集団における機能分化と病態の関係を調べる。 このようにして得られた遺伝子・タンパク質・細胞レベルの研究成果から、サイトカインの側面からエビ類の生体防御機構の詳細を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体作製数を当初計画より少なくしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
数種類のペプチドを用いたペプチド抗体、平成26年度に作製したリコンビナントタンパク質を用いたポリクローナル抗体等を作製し、特異性の高い抗体を作製する。
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