研究課題/領域番号 |
26850129
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
熊谷 祐也 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 特別研究員 (00589997)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糖質加水分解酵素 / GH64 / ラミナリオリゴ糖 |
研究実績の概要 |
糖質の中には生理活性を持つものが報告されており、例えばβ1→3グルカンから成る糖質はヒトに対して免疫賦活化能や抗腫瘍性作用や、植物の抗菌物質の生合成を誘導する作用を持つ。同様にそれらが低分子化したβ1→3グルカンのオリゴ糖であるラミナリオリゴ糖も生理活性を有する。多糖およびオリゴ糖におけるヒトでの活性の発現はデクチン-Iとの相互作用により生じることからオリゴ糖による解析は詳細な検討に有意である。ラミナリオリゴ糖の作製は褐藻類のラミナリンを酵素的に分解すると得られるが、これまでに我々が取得した水産生物の酵素は賦活化能を持たない単糖や2糖サイズまで分解した。そのためラミナリオリゴ糖の基本骨格を作製するため限定分解活性を有する酵素の取得を試みた。GH64はβ1→3グルコシド結合からなる多糖を5糖単位に切断するユニークな酵素であり、ここでは本酵素を用いたオリゴ糖の作製を試みた。 放線菌Kribbella flavidaよりGH64酵素(KfGH64)の取得に成功した。KfGH64の至適温度は45℃、至適pHは5.5であった。各pH条件下で4℃、24時間のインキュベートによりpH安定性を検討した結果、pH 4.0-7.0で安定であった。40℃および37℃で4日間インキュベート後の残存活性はそれぞれ80%と100%であった。KfGH64のラミナリン加水分解物を分析したところ、最も短い鎖長は5糖でありそれ以上の様々なサイズを生成したことからKfGH64は分枝を持つオリゴ糖の調製に適することが分かった。しかしラミナリンは高価であるため、安価なカードランからオリゴ糖の調製を試みた。カードランの加水分解を促進させるため前処理条件を検討した。その結果、本来10%以下の分解率が最終的に70%以上となった。カードランの加水分解物は生成物の80%は5糖であり効率的なオリゴ糖の生産法を確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の当初研究目的の達成度について、期待以上に進展していると考えられた。ラミナリオリゴ糖の調製はこれまで酵素的な分解では困難な状況であった。しかし本研究課題にあるオリゴ糖の生産に適する有用な酵素の取得に成功したことにより調製可能と考えられた。すなわち分解条件を検討することにより効率的なオリゴ糖生産法を確立した。それにより、これまでin vitroの研究において必要なオリゴ糖量(数g)しか手に入らなかったが、in vitroの研究に必要な量(数100 g単位)の調製を可能とした。それによりオリゴ糖を用いた様々な研究を展開していけると考えらえる。本課題は既に2年目以降の糖質と認識タンパク質の相互作用研究の準備段階に入っている。その過程で水産生物からこれまでの糖質認識タンパク質とは異なる新たな糖質認識タンパク質を見出した。これらのことから本研究課題は当初研究目的以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の研究計画のメインは生化学的手法によるオリゴ糖とその認識タンパク質の相互作用を解析することにより、簡易的な機能性の評価法の開発に関して研究を進めていく予定である。加えて、本申請により新たに見出した水産軟体動物由来の糖質認識タンパク質に関しても同様に進める予定である。前年度の研究から糖質とその認識タンパク質の相互作用解析の材料を用意した。それらを用いて等温滴定型カロリメータ(ITC)や表面プラズモン共鳴(SPR)といった相互作用を解析する装置により結合定数等のパラメータを求めることで評価する。これらの測定が困難な場合、古典的な結合定数を求める方法で評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として物品費および旅費によるものである。物品費に関してはオリゴ糖の購入に大きな金額がかかる予定であったが本研究により作製可能となったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費に関しては次年度において国際学会に参加予定であり、それに当てる予定である。 物品費に関しては次年度の相互作用装置の解析に必要な試薬の購入に充て、本研究遂行にあたり充実した解析を行うのに用いる予定である。
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