• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2014 年度 実施状況報告書

新規海水適応遺伝子の探索および海水型塩類細胞分化誘導因子の同定

研究課題

研究課題/領域番号 26850130
研究機関東京大学

研究代表者

宮西 弘  東京大学, 農学生命科学研究科, 特任研究員 (30726360)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード塩類細胞 / 海水適応因子 / イオン輸送体 / in vivoノックダウン / メダカ / サブトラクション法 / 次世代シーケンス
研究実績の概要

本研究は、海洋環境中での生存に必須な新たな浸透圧調節機構を明らかにするため、海水中における塩分排出の99%を担う塩分排出型の塩類細胞の分化誘導機構に着目し、研究を実施した。
まず本年度は、基礎生理学的知見を蓄積した。メダカ塩類細胞のタイプは、他研究グループが明らかにし、先行研究でのティラピアの塩類細胞モデルとほぼ一致した。これは、広塩性魚のモデルとしてメダカが有用であることを示している。メダカ胚の塩類細胞は、淡水および海水群間での差はなく、ともに受精後2日から卵黄嚢上皮に発現し、発生の進行に伴いその細胞密度は増加した。発生段階におけるメダカ塩類細胞に発現する各イオン輸送体のmRNA発現は、ほぼ塩類細胞の増加パターンと同じであった。その受精後2日から、海水移行したメダカ胚の浸透圧は減少することから、塩類細胞から塩分を排出していることが示唆された。
淡水および海水に馴致した鰓間におけるサブトラクション法および次世代シーケンサーによる解析から、鰓で最も高く鰓および皮膚のみに発現し、海水移行で発現上昇する新規遺伝子が2つ見つかった。しかし、in situハイブリダイゼーションおよびNKAの免疫染色との多重染色の結果、塩類細胞には発現が見られないが、上皮にのみ発現する遺伝子であることが分かった。mRNA全長を同定した1遺伝子を標的に、vivo-モルフォリノを用いたin vivoノックダウンの実験系を確立した。次年度はこの系を用い、新規遺伝子の機能解析を進める。さらに、サブトラクション法および次世代シーケンサーによる解析から、塩分排出型塩類細胞の新規分化誘導因子は同定出来ていないため、ゼブラフィッシュでの淡水型塩類細胞の分化誘導因子であるFOXI3に着目し、シグナリングの下流遺伝子の同定から、塩分排出型塩類細胞の分化誘導因子の同定を試みる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、海洋環境中での生存に必須な新たな浸透圧調節機構を明らかにするため、海水中における塩分排出の99%を担う塩分排出型の塩類細胞の分化誘導機構に着目し、順調に成果を挙げてきた。本研究で行った、メダカにおける塩類細胞に関する成果は、論文として発表する予定である。さらに、研究の進行に伴い、鰓を含む上皮組織において、海水という高浸透圧ストレスに対する防御機能が期待できる新規遺伝子を同定した。さらに、サブトラクション法および次世代シーケンサーによる解析から、塩分排出型塩類細胞の新規分化誘導因子は同定出来ていないため、塩類細胞の分化誘導因子であるFOXI3の機能解析と、塩類細胞の分化誘導シグナリングの下流遺伝子の探索を行うこととした。当初の計画からの若干の変更を行うが、研究の発展に伴うものであり、新規海水適応機能の解明と、塩類細胞の分化誘導遺伝子の同定という本研究の目的にかなうものである。

今後の研究の推進方策

今後は、高浸透圧ストレスに対する防御機能が期待できる新規遺伝子の機能解析を行う。今年度の研究により、この新規遺伝子を同定し、vivo モルフォリノを用いた簡易的かつ効率の高いメダカ仔魚におけるノックダウン方法を確立した。この系を用いて、ノックダウンしたことによる、仔魚の体内浸透圧への影響、水透過性への影響、代謝への影響、上皮組織における組織的な変化等を詳細に調べ、新規遺伝子の機能を解明する。さらに、塩類細胞の分化誘導因子であるFOXI3の機能解析を平行して行う。FOXI3に対する抗体を作製し、組織的な観察およびノックダウンによる機能解析を行い、淡水および海水馴致した鰓に存在する、全塩類細胞における転写因子であるかを調べる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015 2014

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] 塩類細胞におけるNa+/K+-ATPaseアイソフォームの同定2015

    • 著者名/発表者名
      宮西 弘、前田祥太郎、金子(大谷)律子、金子豊二
    • 学会等名
      平成27年度 日本水産学会春季大会
    • 発表場所
      東京(東京海洋大学)
    • 年月日
      2015-03-27 – 2015-03-31
  • [学会発表] 環境水の浸透圧変化に伴うスズキ鰓塩類細胞の分布変化2015

    • 著者名/発表者名
      井ノ口繭、中村政裕、宮西弘、益田玲爾、金子豊二
    • 学会等名
      平成27年度 日本水産学会春季大会
    • 発表場所
      東京(東京海洋大学)
    • 年月日
      2015-03-27 – 2015-03-31
  • [学会発表] 淡水性ザリガニProcambarus fallax f. virginalisの自切後の胸脚の正常な再生はアクチビン受容体baboonを介する2015

    • 著者名/発表者名
      進士淳平、宮西弘、後藤寛貴、金子豊二
    • 学会等名
      平成27年度 日本水産学会春季大会
    • 発表場所
      東京(東京海洋大学)
    • 年月日
      2015-03-27 – 2015-03-31
  • [学会発表] Seawater experience enhances hyper-osmotic adaptability in medaka, Oryzias latipes2014

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Miyanishi, Mayu Inokuchi, Shigenori Nobata, Toyoji Kaneko.
    • 学会等名
      11th International Congress on the Biology of Fish
    • 発表場所
      Edinburgh、Scotland
    • 年月日
      2014-08-03 – 2014-08-07

URL: 

公開日: 2016-06-01  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi