研究課題/領域番号 |
26850131
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平瀬 祥太朗 東京大学, 大気海洋研究所, 研究員 (90635559)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 侵入種 / 集団構造 / ボトルネック / ミトコンドリアDNA / マハゼ |
研究実績の概要 |
本研究は、船のバラスト水を介して移動するマハゼにおいて遺伝的撹乱が起こっているかどうかを明らかにすることを目的としている。そのためには、まず本種の集団構造についておおまかに捉えておく必要がある。Neilson and Wilson(2005)は、南北カリフォルニアのマハゼ侵入集団の起源を明らかにするため、ミトコンドリアDNAのコントロール領域(mtCR)による遺伝解析を侵入集団、東京、仙台、福島の集団を対象として行った。その結果、日本国内における比較的大きな遺伝的分化、侵入集団の起源が東京湾である可能性を示した。しかし、それ以外にマハゼの集団構造解析に関する研究例はない。平成26年度は、日本国内の集団構造についておおまかに把握することを目標とした。日本列島沿岸の15地点において各地点30個体前後を釣りによって採集し、そのうち14地点のマハゼを用いてmtCRによる遺伝分析を行った。Neilson and Wilsonのデータも合わせて分子系統解析を行った結果、ブートストラップ値は低いものの、北日本と南日本系統が存在する可能性が示された。AMOVA分析は日本国内の標本集団間における有意な遺伝的分化を示し、ペアワイズFST値は日本国内のほとんどのペアで有意な値を示した。集団間の類縁関係図は地理的に離れている博多湾と東京湾の集団が遺伝的に近いことを示し、遺伝的撹乱が起きている可能性が示唆された。しかし、多くのハプロタイプが集団間で共有されており、遺伝的組成が偶然に近くなった可能性も考えられた。北カリフォルニア侵入集団と東京湾に面する3集団(東京、横浜、千葉)は遺伝的に近く、東京湾起源が強く示された。一方で、南カリフォルニア集団は、3集団とは遺伝的に大きく異なっており、その極めて低い遺伝的多様性から、侵入プロセスで激しいボトルネックを経験したと推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国の釣具店関係者のご協力もあり、日本全国のマハゼの標本集団を迅速に確保することができ、尚かつ、本種の遺伝的分化の程度を把握することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
ミトコンドリアDNAの地域間の遺伝的差異が想定より低く、ミトコンドリアゲノム全塩基配列(ミトゲノム)よって本種の遺伝的分化を詳細に調べることが困難であることが予測された。そこで、当初予定していたミトゲノムによる解析を取りやめ、来年度に核ゲノムを対象としたRAD-seqを行う。また、マハゼは、韓国や中国でも在来集団が存在するため、それらも合わせた集団構造解析も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ミトコンドリア全塩基配列による集団構造解析を取りやめたため。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度に行うRADシーケンスの費用にする。
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