変態メカニズム解明のために、最大伸長期に達したニホンウナギ仔魚に絶食処理を施し、変態を誘導させた。変態過程を肛門全長と体高から変態前、変態前期、変態後期、変態後の4期間に分け、サンプリングした。各群からRNAを抽出し、RNA-seq法によるトランスクリプトーム解析に供した結果、約3億7千万リードの塩基配列データを得た。Trinityによるde novo assemblyによりコンティグ数438364のcDNAカタログ配列を作成した。冗長性除去のためCD-Hit-ESTにより80%配列同一性でクラスタリングし、コンティグ数を320321まで減らした後、BlastXおよびBlast2Goによりアノテーションを付与した。CLC genomic workbenchを用いてマッピングし、各群の発現量を比較した。変態前と変態前期の発現遺伝子に着目して解析したところ、頭部では65コンティグ、体部では131コンティグの発現変動遺伝子(FDR corrected p-value < 0.01)が見つかった。またアノテーション付与後、REVIGOを用いたGene Ontology解析を実施し、結果を可視化した。以上の解析から、GAPDHは変態が進行するほど全身で増加し、定量PCRなどの内部標準遺伝子として不適であることや、Cathl1が変態前期のみで有意に増加していることなどが明らかとなった。 また、変態に伴って甲状腺ホルモンレセプターの発現が上昇することが明らかとなった。そこで、甲状腺ホルモン曝露実験を実施した。最大伸長期においてT4-100nMの海水で24時間浸潤曝露させたところ、曝露した17尾全てで変態が誘導されたことを確認した。一方、対照群では試験期間中に変態が開始された個体は40%以下であった。従って、ニホンウナギにおいても甲状腺は変態に重要な役割をしていることが示唆された。
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