研究課題/領域番号 |
26850135
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研究機関 | 公益財団法人岩手生物工学研究センター |
研究代表者 |
山田 秀俊 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 生物資源研究部, 研究員 (70511955)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 8-ヒドロキシエイコサペンタエン酸 / オキアミ / ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体 |
研究実績の概要 |
本年度は、主に水産資源における8-HEPE含有量の測定と8-HEPEの生化学解析に取り組んだ。 オキアミ(ツノナシ、南極)、魚(イワシ、サンマ、アジ、サバ、チカ、マガレイ)、魚醤、魚油、クリルオイル、エビ(アマエビ、アカエビ、ヤマトヌマエビ)における8-HEPEの含有量をLC/QTOFMSで分析した。オキアミには100グラムあたり10~20mgの8-HEPEが、アカエビには平均2.3mgの8-HEPEが含有されていた。そのほかの水産物や加工品において、8-HEPEは検出されなかった。この結果から、8-HEPEはオキアミおよびエビに含有される化合物であることが明らかになった。また、甲殻類における8-HEPEの生理作用について検討するため、組織間での8-HEPE含有量について分析したところ、腹部と比較して頭胸部における8-HEPE含有量が約8倍高いことを明らかにした。 マウス臓器および組織における8-リポキシゲナーゼ(Alox8)の発現についてreal-time PCRを用いて検討した結果、Alox8は皮膚においてのみ発現が確認され、肝臓、筋肉、脂肪組織、肝癌細胞株、マクロファージ細胞株、線維芽細胞株、脂肪前駆細胞株、筋芽細胞株においては発現が認められなかった。Alox8による8-HEPE産生について検討するため、Alox8をクローニングし、Alox8を強制発現させたNIH3T3細胞にEPAを添加したが、8-HEPE産生は認められず、18-HEPE, 5-HEPEなど8-HEPEの構造異性体の産生が認められた。8-HEPEの細胞内への取り込みと細胞内での安定性についてEPAと比較検討し、細胞内への取り込みはEPAの方が高いが、細胞内に取り込まれた8-HEPEの半減期はEPAよりも長いことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、水産物中およびマウス組織における8-HEPE含有量について分析し、8-HEPEがツノナシオキアミ、南極オキアミ、アカエビに含有されていることを明らかにした。また、8-HEPEの含有量がオキアミの部位によって異なること明らかにすることができた。これまで、オキアミでしか確認されていなかった8-HEPEがアカエビにも含有されていたこと、オキアミの頭胸部において腹部で高い含有量を示したことから、HEPEは甲殻類に含有される化合物であり、甲殻類のなかでもなんらかの生理活性を有しているのではないかと推察される。 8-HEPEの生化学解析も計画通りに、Alox8の発現解析、Alox8のクローニング、培養細胞での過剰発現、8-HEPEの半減期解析に取り組んだ。Alox8が皮膚組織特異的に発現していることを明らかにし、Alox8のクローニングと発現ベクターの作製と、細胞内での標識タンパク質発現も確認することができた。Alox8を一過性発現させたNIH-3T3細胞株では8-HEPEの産生が確認されなかったが、発現量や細胞種による違いなどを明らかにするため、Alox8の発現と8-HEPEの産生については継続的解析する必要が有る。 平成26年度実施する予定であった研究には計画通り取り組むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は計画通りに、PPAR活性化を介した8-HEPEの生理作用とPPARを介さない8-HEPEの生理作用の解析に取り組む。PPARを介した生理活性については、Alox8が発現している皮膚組織に着目して、ケラチノサイトおよびメラノサイトにおける機能について検討する。PPARを介さない8-HEPEの生理作用については、8-HEPEを固定した磁気性ナノビーズ(FGビーズ)を作製し、8-HEPEと結合するタンパク質をプルダウン法にて集め、質量分析によるフィンガープリント法にて同定する。さらに、甲殻類における8-HEPEの機能について検討するため、甲殻類(エビ)の各組織における8-HEPE含有量を分析する予定である。Alox8によるEPAの8-HEPEへの代謝については、複数の細胞株で安定発現株を作製して検討するとともに、標識Alox8タンパク質を精製し、in vitroでの8-HEPE産性能について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
8-HEPEがクルマエビ科のアカエビにも含有されていたこと、オキアミにおいて8-HEPE含有量が組織によって異なっていたことから、甲殻類における8-HEPEの生理機能を解析するために、車海老の各組織における8-HEPE含有量を測定することにした。車海老のサンプルが手に入るのは、毎年5月であるため分析に必要な経費分の予算を繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
8-HEPEの分析に必要な標準物資、有機溶媒、カラムの購入など試薬および消耗品の購入に使用する。
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