平成28年度は、①茨城県における実態調査の実施と整理、②島根県における実態調査の実施と整理、③山形県における実態調査の整理を中心的に実施した。 ①については、農協直接販売及び農地中間管理事業の進展が、茨城県における農業構造変動にどのような影響を与えたかという視点から研究を進めた。その結果、農協が積極的に直接販売に取り組む地域では農業構造変動が進展する傾向にあること、農地中間管理事業の展開は構造変動を後追いするものにとどまっていることをを明らかにした。 ②については、島根県による派遣労働者導入促進事業が、集落営農組織の人材導入と経営多角化に与える影響を検討した。派遣労働者の導入は、労務管理の軽減を通じて人材導入に貢献していることが明らかとなった。 ③については、鶴岡市における枝豆作付の拡大と交付金の関係について検討した。鶴岡市において枝豆作付が拡大したのは、その収益性の高さとともに地域において裁量的に利用できる産地づくり交付金の影響が大きかったこと、飼料用米への重点化は枝豆作付の拡大を妨げる方向に働いていることを明らかにした。 全体を通して、直接支払をはじめとする政府からの交付金を有効に利用している事例ほど、規模拡大や経営多角化を積極的に進めていることが明らかになった。ただし、政策自体が大きく変化している中で(戸別所得補償交付金の減額と飼料用米への助成増大)、研究の枠組みの再検討を迫られていることも感じられた。
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