研究課題/領域番号 |
26850139
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
張 馨元 東京大学, 東洋文化研究所, 助教 (60635879)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フードレジーム / 中国 / COFCO / 穀物貿易 / 食料需給 |
研究実績の概要 |
平成27年度では現地調査2回、学会報告2回、国際ワークショップでの学術報告1回を行い、本課題の一部成果をまとめた英文データ集China Grain Assemblyを刊行した。 1回目の現地調査は、2015年6月に台湾中央研究院にて中国食糧需給に関わる資料調査を行った。2016年3月に中国吉林省で2回目の現地調査を実施し、トウモロコシ農家への訪問のほか、吉林糧食経済学会、中糧集団の関係者と2015年以降の食糧政策転換について意見交換を行った。とりわけ2016年3月の調査では今後の研究遂行にとっての有益な知見を多数得ることができた。 また、6月24日に台湾中央研究院(台北市)で開催したAAS-in-Asian学術大会にて“The Development of Grain Markets in China’s Big Agricultural Provinces”を題する報告(英語)、10月17日に常磐大学(水戸市)で開催したアジア政経学会秋季大会にて「中国経済における国有アグリビジネスの役割」を題する報告(日本語)を行った。さらに2016年3月EHESS(パリ)で開催した国際ワークショップ"Scales of the alimentation: An Asian Perspective"にて"The Role of State-owned Agribusiness in China’s Economy"(英語)について学術報告を行った。 2016年3月に刊行したChina Grain Assembly(和文タイトル:「中国食糧データ集」) は、本研究で収集したデータの一部を分析・加工し、1950年代以降の中国における食糧の生産、国内流通、海外貿易、価格に関わる中長期的データを網羅した英文データ集である。本データ集は印刷版で刊行するほか、2016年4月中に東京大学社会科学研究所のウェブサイトにて全文無料公開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究計画では、(1)資料の収集と分析、(2)中国での企業訪問(可能であれば米国穀物商社も訪問)、(3)上記2点で得た成果の作成・公表、を目標とした。(1)と(3)に関しては、研究実績の概要で説明したように、現地調査の機会を利用し、関連資料を収集できたこと、学会や国際ワークショップで計3回の学術報告を行い、英文データ集も刊行できたことで、目標が順調に達成されたと自己評価している。(2)に関しては、中国国内の経済・政治情勢の変化による制限が大きいため、年度末に現地の農家及び企業に対する訪問調査がようやく実現できたのである。2015年は中国の食糧政策が大きく転換した年である。2016年3月で実施した調査では、政策転換の影響を受け、食糧生産農家がどのように反応しているかを把握できた。一方で、アグリビジネス(企業側)が受けて影響を把握するには時期尚早であることが分かった。また、財源と時間の制約で米国穀物商社への訪問を断念せざるを得なかった。 総じて平成27年度の課題実施状況はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究活動は、(1)現地調査、(2)論文の執筆・発表に重点を置く。 現地調査の目的は、昨年度で把握しきれなかった2015政策転換の影響を受け、中糧集団をはじめとするアグリビジネスの経営活動の変化を明確にすることである。また、平成28年度中にこれまで3年間の研究成果をまとめ、論文2本の執筆と完成を目指す。論文の内容は、1990年代以降における中国食糧需給の構造的変化に関する考察と、中糧集団の海外事業の展開過程に関する分析の2つと予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は下記の2点にある。 1)中国政府が刊行する食料関連のデータ及び各種年鑑資料は、例年では12月末までに購入可能となる。しかし2015年では、これからの資料の刊行が大幅に遅れ、3月になってようやく一部の資料が入手可能となった。3月末時点では、未刊行のものがまだある状況である。よって、資料購入代として予定している物品費の一部が次年度使用額となった。 2)平成27年度では、中国では企業訪問が可能となったのは年度末の3月であり、調査可能な期間が限られていたため、旅費に未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額、約6.6万円を、平成27年度で入手できなかった食糧関連資料の購入及び中国での企業訪問調査に使う予定である。
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