本研究は以下4点を明らかにした。(1) 1990年代後半から、中国では畜産品と飼料関連の食糧需要が拡大し、それに伴って供給側の構造調整が起きている。(2)「南糧北調」といわれている計画経済期の地理的需給体制は、食糧に関わる海外貿易の影響を無視しており、正確性に欠ける。(3)中糧集団は計画経済期に国内の食糧安全保障のみならず、中国の海外貿易全体を支えていた。(4)中糧集団が1960年代から世界穀物市場に活発に活動し、1990年代以降、米国発穀物商社と同等な勢力を持つコングロマリットに成長し、国家代理人と営利企業という二面性を持つ国有アグリビジネスとして、その影響力を発揮している。
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