研究課題/領域番号 |
26850141
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
高山 太輔 明海大学, 経済学部, 講師 (50612743)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 土地改良事業 / ソーシャルキャピタル / プログラム評価 |
研究実績の概要 |
日本農業の低生産性の原因として、農地の零細性と分散性があげられる。農地の零細性と分散性を解消するために圃場整備事業が実施されている。圃場整備事業の効果は、農地の零細性と分散の解消だけでなく、圃場整備事業を実施する際に必要となる実施地域内での合意形成に至るプロセスにより、農村の社会的特徴である農業生産における相互補完機能や相互扶助といったソーシャルキャピタル(以下、SC)が蓄積され、農業生産面だけでなく生活面においても農村地域の活性化につながることが期待されている。 平成26年度は、インパクト評価の手法を利用して、圃場整備事業がSCに対して持ちうる効果を明らかにした。具体的には、1990年と2000年の農林業センサス・農業集落カードデータをマッチングすることによりパネルデータを作成し、傾向スコアマッチングを用いて処置群における平均処置効果を求めることにより、圃場整備事業による集落内のSCへのインパクトを推定した。 分析の結果、圃場整備事業は内部結束型SCを高める効果を確認できたが、橋渡し型SCに対する効果は確認できなかった。さらに内部結束型SCを構成する要素に着目すると圃場整備事業は集落内の組織数や寄合の実施の有無に正の影響を与えていることも明らかになった。以上より、圃場整備事業は、これまでの既存研究において指摘されている生産性の改善や農地の流動化を促進するだけでなく、SCの蓄積を通じて農村の活性化にも寄与していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、インパクト評価の手法を利用して、圃場整備事業がソーシャルキャピタルに対して持ちうる効果を明らかにした。具体的には、1990年と2000年の農林業センサス・農業集落カードデータをマッチングすることによりパネルデータを作成し、傾向スコアマッチングを用いて処置群における平均処置効果を求めることにより、圃場整備事業による集落内のソーシャルキャピタルへのインパクトを推定した。
研究成果(「The Impact of Participatory Projects on Social Capital: Evidence from Farmland Consolidation Projects in Japan」)を29th Triennial Conference of the International Conference of Agricultural Economists (ICAE)にて発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、1990年から2000年における農村共有資源の管理形態の変容の実態を明らかにする。そして、圃場整備事業による「農村共有資源の管理形態」や「寄合開催」へのインパクトを評価する。 具体的には、昨年度構築した農業集落レベルのパネルデータを活用し、計測の際、偏りなくプログラムの効果を推定する方法として提唱され、近年頻繁に利用されている傾向スコアマッチングおよび差分の差推定法を用いることにより、圃場整備事業による「農村共有資源の管理形態」や「寄合開催」への効果を推定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ購入のための費用を計上していたが、データの大量購入により割引価格が適用されたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、イタリア・ミラノで開催される国際学会(29th Triennial Conference of the International Conference of Agricultural Economists)で研究発表を行うための旅費に充当する。
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