本研究では、地中熱を利用して融雪を行うに当たり、ヒートポンプを使わないことで初期投資やランニングコストの削減効果を図った。熱交換井の設置に当たり、掘削深度を大きくすることにより採熱量が多くなるが、掘削費が大きくなる。このため、10mより浅い深度範囲内で、熱交換井の改良により、地中熱の採熱効率の向上を目指した。まず、ボーリングマシンを使わずにパワーシャベルを使った回転埋設型の鋼管杭を熱交換井として用いる方式を確立した。この方法により、施工費の削減や採熱効率の増加が可能となった。また、地中に埋設した融雪槽と採熱鋼管杭により、大きな雪塊を砕いて融かす技術も確立した。他方、一連の実験で熱交換井のみでは採熱量が低く、融雪能力に対して限界が見られた。また、弘前大学で熱交換井の埋設を試みたが、地盤が固いため4m深程度までしか掘削できず、十分な地中熱が得られなかった。同時に研究過程でエアコンを水冷式に改造して性能評価を調べていったところ、地下水のように一定熱源温度が保たれれば寒冷地でも高いCOPが期待できた。そこで、補助熱源としてのヒートポンプの性能を評価するため、エアコンを分解してヒートポンプを剥き出しにした装置を用いて、加熱能力の測定を行った。その結果、寒冷地でも15℃程を保っている地下水を熱源とすれば、空気熱源よりも高いCOPを示し、またデフロストによる消費電力のロスを抑制することが確認された。これまでの研究により、寒冷地において掘削による熱交換井を設置するよりも、地下水を熱源とした方が、より安定的で低コストの融雪ができるものと思われた。
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