研究課題/領域番号 |
26850157
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
佐合 悠貴 山口大学, 農学部, 助教 (20648852)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | モデル化 / 養水分吸収 / チップバーン / 硝酸態窒素 / 高付加価値化 / 人工光型植物工場 |
研究実績の概要 |
本研究は,植物の物質輸送現象を中心とした環境生理反応のモニタリングやモデリングの手法を開発し,チップバーン(Ca欠乏)の回避,野菜中の硝酸態窒素含量低減および野菜の高付加価値化などの技術の開発を目標としている。この目的を達成するために,本年度(2年度目)においては,植物の物質輸送現象などの環境生理反応をモデル化し,チップバーン発生,葉内硝酸態窒素含量,環境ストレス反応などの解析に応用した。課題1では,Ca吸収・分配モデルおよび成長モデルによる葉菜類のチップバーンの回避を目標として,Ca吸収・分配に対する環境要素および蒸散速度の影響の評価・解析を進め,蒸散に影響されるCa吸収速度が個葉中のCa含量に与える影響を評価した。さらに,個葉中のCa含量とチップバーン発症との関係を解析した。その結果,光強度を高めることによってCa吸収速度は増加したが,内葉のCa濃度には大きな違いがなく,チップバーン発生も増加することが示唆された。また,これらの情報を基に個葉中のCa濃度の推定モデルを構築した。課題2では,窒素吸収・代謝モデルによる葉内の硝酸態窒素含量の低減を目的として,前年に引き続き,根の窒素吸収速度に対する環境要素および蒸散速度の影響を定量的に評価した。その結果,吸収モデルに基づく硝酸態窒素吸収量を指標として,植物の成長に必要な窒素量のみを与えることにより,葉内の硝酸態窒素含量が低減できることを明らかにした。課題3については,環境ストレス反応モデルに基づいた野菜の高付加価値化を目標として,低温ストレス下における葉菜類数品種の成長速度,植物水分生理および葉内の機能性成分含量の変化を経時的に定量した。その結果,品種によって機能性成分含量に対する低温ストレスの効果は異なり,その効果は成長速度と関係が有ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(2年度目)においては,主に植物の環境生理反応モデルの構築を実施し,研究計画に従って適切に実施されており,概ね当初の予定通りの研究項目を実施できたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに実施した,様々な環境条件下における植物の物質輸送現象を中心とした生理反応の評価やモデル化結果をふまえて,今後は,各生理反応モデルを統合し,チップバーン発生予測モデル,葉内硝酸態窒素含量予測モデル,環境ストレス反応モデルなどを構築していく。 課題1では,Ca吸収・分配モデルおよび成長モデルによる葉菜類のチップバーンの回避を目標として,前年に引き続き,Ca吸収・分配に対する環境要素および蒸散速度の影響の評価や個葉中のCa濃度とチップバーン発症との関係解析を進め,それらの結果を基にCaの吸収と分配を考慮したチップバーン発生予測モデルを構築していく。 課題2では,窒素吸収・代謝モデルによる葉内の硝酸態窒素含量の低減を目標として,前年度に引き続き,窒素吸収・代謝窒素に対する環境要素の影響の解析を進め,窒素吸収・代謝を考慮した葉内硝酸態窒素含量予測モデルを構築していく。 課題3では環境ストレス反応モデルに基づいた野菜の高付加価値化を目標として,環境要素や根の物質吸収および植物水分生理などが葉内の機能性成分含量に与える影響について詳細に解析することで,環境ストレス下における葉内の機能性成分の蓄積をモデル化していく。
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