コストのかかる温室の隙間換気測定の代替方法として,数値流体力学を用いた解析から隙間換気の駆動力の大きさを表す温室の外圧係数と内圧係数を計算し,隙間換気回数を予測するモデルを開発した。 温室の外圧係数を計算するCFD解析では,有限体積法を元に質量,運動量,乱流エネルギーと散逸の保存式の解を数値的に得た。解析は定常状態とし,乱流モデルにはRNG k-εモデルを用いた。各温室の外圧係数は,温室表面を東西の妻面,南北の軒面,アーチ天面,の5つに分割し,各面の平均値として算出した。温室の隙間換気回数の推定には,建物の隙間流れを計算するVickery・Karakatsanis(1983)の式を用いた。外圧と内圧の差によって生じる隙間流れの単位時間流量の和が温室全体ではゼロになると仮定して,外圧係数より内圧係数を算出し,それらを用いて温室を出入りする空気流量を再度算出することで,隙間換気回数を推定した。 検証実験には東西棟および南北棟のアーチ型プラスチックハウス(間口6.0 m,奥行き14.0 m,棟高3.5 m)を使用し、1層保温カーテンと温風加温機を用いた5ヶ月間のトマト栽培期間中に、SF6をトレーサガスに用いた濃度減衰法による隙間換気回数の測定を行った。測定期間中には,一時的にフィルムとスプリングを用いて側窓および妻面の扉の隙間を閉塞し、温室の隙間面積の変化がモデルの計算精度に及ぼす影響を検証した。 温室の隙間換気回数の推定値は,隙間の閉塞如何に関係なく,南北棟および東西棟の実測値とよく一致した(R = 0.82~0.99,RMSE = 0.014~0.052 回/h)。また、隙間を閉塞しない時には東西棟の隙間換気回数が常に大きくなるという測定結果は,CFD解析に基づく推定においても正確に再現された。
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