研究課題/領域番号 |
26850161
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
原田 陽子 山口大学, 農学部, 学術研究員 (40726254)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 植物 / ホウレンソウ / 光害 / 開花遺伝子 |
研究実績の概要 |
ホウレンソウの光害では、夜間照射の影響により開花促進、すなわち「とう立ち」を起こす。そこで、屋外照明の漏れ光の照射を受けた場合でも、被害が小さい品種を栽培する等の対策が行われている。しかし、光害対策に有効な品種の従来の選択手段は、栽培試験の結果を用いるため、膨大な品種の中から選択するには非効率である。そこで、多品種の比較に必要な試験期間を短縮させ、効率的なホウレンソウ光害の評価を試みた。 平成26年度の研究実施計画として、「①ホウレンソウのFT遺伝子発現に対して、光害の影響評価に適したサンプリング手法および暗期照射方法の確立」を目標とした。まず、交配・抽苔性・早晩性のことなる6品種(アクティブ、アトラス、おかめ、トリトン、パレード、強力オーライ)を栽培し、同遺伝子の発現が確認可能か試した。結果、文献1)をもとに作成したGmFT2遺伝子プライマセットは、全ての品種で発現が確認された。次に、この遺伝子が光害発生時、つまり夜間(暗期)照射を受けた時に、どう変化するのかを確認した。結果、暗期が暗黒の場合より、暗期照射を受けた場合の方が多くなり、さらにそれは、1晩より2晩の方がやや多くなった。つまり、暗期照射を受けたことによる開花促進が、GmFT2遺伝子の発現から確認可能だと示唆された。 なお、サンプリング手法の確立の内、サンプリング時期については、試験可能な重量が確保できる最低の葉数である、本葉4枚程度の時とし、部位については、全葉を使用した。また、株間の差が大きい傾向がみられたため、サンプル数を多く確保する必要性が分かった。サンプリング時間については、文献1)をもとに、暗期が暗黒の場合に発現が最大となる明期開始後4時間としたが、今後、暗期照射の影響がより顕著となる時間がないかも探索する予定である。 1)Pinら、SCIENCE(330)、pp1397-1400、2010/12/3
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
暗期照射を受けること、すなわち光害発生時のGmFT2遺伝子発現は、暗期が暗黒の時と比べ、増加することが確認され、H26年度の目標であった「①ホウレンソウのFT遺伝子発現に対して、光害の影響評価に適したサンプリング手法および暗期照射方法の確立」が可能だと示唆された。 サンプリング手法の確立では、必要サンプル数、葉数、サンプリング時間が決定された。暗期照射の方法としては、1晩照射から影響が確認可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、H27年度は、「②FT遺伝子発現と光害による品質低下の程度(抽苔率、花茎長)との相関関係を解明し指標を作成」を行う。人工気象器で栽培し、様々な照明のスペクトル(分光・色)の違いや照度で暗期照射し、多段階な光害発生状態を再現した上で、確立したサンプリング手法を用いGmFT2遺伝子発現の定量を行う。その後引き続き生育させ、品質低下の程度(抽苔率、花茎長)を調査し、遺伝子発現と品質低下の相関関係を導き、光害評価の指標を確立する。また、H26年度で、新たに気付いた「暗期照射の影響がより顕著となるサンプリング時間の確認」も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
クラウド型ソフトの購入を計画し、4月1日より開始出来るよう調節した。しかし、クラウド型の購入時は、個人アカウントが認められず、大学アカウントとなるため、非常勤雇用で転勤もありうることを考慮し、最終的には購入できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由から、実験消耗品の購入に割り当てる予定としている。
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