本研究では、対象物の水ストレス状態に対する分子レベルでの意味づけを行うため、可視・近赤外およびテラヘルツスペクトルとそのイメージングをもちいた研究を実施してきた。葉の水分欠乏のスペクトル変化として、660nmのレッドエッジ付近が短波長側にシフトする可能性を再度確認し、水ストレスの指針になりうる可能性を示した。また、水ストレスに加えて、圧力するとレスに関する検討も実施し、会合状態によってピークシフトが起こっているのではないかという可能性を得た。テラヘルツスペクトルに関しては、水分状態をモニタリングするため、そのベースライン解析が有効であることは見出されたが、明確なバンドは得られなかった。研究最終年では、イメージングによる葉面の水環境状態変化に加え、サンプル表面のみの水分モニタリングによる水ストレス(乾燥)挙動解析についても実施してきた。近赤外イメージングは、D-NIRs(横河電機)により24時間程度の連続モニタリングによって実施した。水分の検量は近赤外領域の水分に関連するバンドから導かれたが、バンドがブロードであるためその水分動態の分子レベルでの解明にはより詳細な検討が必要である。そのため温度環境をコントロールして分光応答を調査する実験を継続する予定である。さらに、サンプル表面での水分状態を明確化するため、乾燥過程にあるサンプル(牛肉)の水分活性、含水率および近赤外分光を取得し解析を実施してきた。近赤外分光取得の焦点位置、インテグレーションタイム等の調整から表面部分の変動を追跡可能な手法を考案した。水分追跡に用いた波長は、970nm付近の水のバンドであるが、水分活性との関連性を相関させることで、表面水分活性の非破壊モニタリングの可能性を示唆する結果を得た。
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