本研究では、以下の内容でウズラの経済形質関連遺伝子座のマッピングにむけた基盤を整備した。1.コマーシャル・ウズラ13系統の遺伝的背景を明らかにし、資源家系の親世代の候補となる2つの系統を選定した。45のマイクロサテライトマーカーを用い、各系統間の遺伝的分化の程度を評価した。B系統を除いたその他12系統の間では、大きな遺伝的分化は認められなかった。一方で、B系統とその他12系統の間では、高い遺伝的分化がみられた。これらの結果は、B系統は他の系統と遺伝的差異が大きく、マーカー型にも大きな違いが存在する可能性を示唆していた。そこで、13系統の中から遺伝的分化の程度が高いA系統とB系統を資源家系の造成に用いることとした。2.A系統とB系統の受精卵を導入し、孵化・育成した。その後、経済形質のデータを収集し、系統間で有意な差があるかを検討した。体重については、雌雄ともにB系統がA系統よりも有意に高かった。また、卵関連形質についても系統間で大きな違いがみられた。初産日齢は、B系統はA系統よりも遅い傾向にあり、初産時の卵重は、B系統がA系統よりも有意に大きかった。このように、形質にも大きな差異が存在していた。したがって、これらの系統を資源家系の作成に用いることで、効率的なマッピングが期待できると考えられる。現在、A系統とB系統を交配し、F1の生産を実施している。3.新たなマイクロサテライトマーカーを作成するために、120箇所のCAリピート候補領域にプライマーを設定した。その中の64箇所で増幅が認められ、10箇所を選び、蛍光標識を付加したプライマーにより、多型の程度を確認したところ、最大で1マーカーあたり9つのアリルを検出することができた。これらのマーカーは、今後の遺伝子マッピングにおいて、有効なツールとして利用できると考えられる。
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