研究課題
精密な放牧管理のためには,時々刻々と変化する圃場内の草量と飼料成分(栄養価)の空間的な分布状況をリアルタイムで診断する管理手法の高度化が必要不可欠である。本研究では,ハイパースペクトル(HS)センサを搭載した無人ヘリ(UAV)から,圃場内の草量と飼料成分の空間分布を簡便かつリアルタイムで表示する草地診断技術の開発を目的とする。広島大学西条ステーション内の放牧地および採草地において,これまでに地上レベルで開発した飼料成分の診断技術,ならびにUAV搭載カメラ画像から草量の空間的分布を簡便に評価する技術を発展し,圃場内の草量に加えて飼料成分の空間的な変動を簡便かつ高頻度で取得可能な空撮システムを開発する。初年度は,UAVに搭載したHSセンサを用いた草量と飼料成分の計測システムの開発を中心に行った。主な調査地は,これまでのデータ蓄積もある広島大学農場内の放牧地(面積1.6ha,人工草地)とイタリアンライグラス採草地(1 ha)を調査地とした。予備試験では,空撮に利用するUAVとHSセンサのシステム仕様に関する調査を行った。地上部の観測対象範囲は,HSセンサの視野角とUAVの飛行高度によって変化するため,まずは,視野角10°と25°,高度5, 10, 20, 30mで飛行した場合の飛行時間,観測点数,地上HSデータとの比較検証作業を実施した。続いて植物が生育する6~10月の期間のうち春と秋の2回,UAV搭載HSセンサによる空撮と地上調査を実施した。以上のフィールド調査で得られた計20地点(6,11月×各10地点)のデータを用いて,UAV搭載HSセンサから草量,飼料成分を推定するモデルの開発と地上観測ハイパースペクトルデータとの検証作業を行っている。
3: やや遅れている
空撮に利用するUAVとHSセンサのシステム仕様に関する予備試験は順調に進んでいる。一方で,地上検証データのうち牧草の飼料成分(CP, NDF, ADF)の分析に時間がかかってしまったため(2015年3月末に終了),飼料成分を推定するモデルの開発が予定より少し遅れているが,現在解析を進めている。
植生の生育状態および家畜の放牧行動は,気象条件等によって季節的・経年的に大きく変化することが予想されるため,H27年度も初年度と同様の調査を継続する。以上の草量と飼料成分の推定マップは,同時期に行われているウシの行動調査で得られた圃場内の空間データ(地形,気象,ウシの放牧行動)の情報を地理情報システム(GIS)上で統合し,草量・飼料成分の面的分布とウシの空間的選択性の関係を明らかにする。これまで申請者らが,夏期の短期間に実施した放牧試験の結果からは,ウシの採食行動と糞排出の空間分布に与える要因(地形と草量,水飲み場までの距離)が明らかになっているが,これらは季節的に大きく変化することが予想される。そのため,新たに加わったデータを追加したモデルの更新作業も実施する。
予定していた3回(春,夏,秋)の調査のうち,夏季の調査が天候の関係で実施できなかったために1回分の消耗品および植物サンプルの化学分析費用を使用しなかったため。
予定していたサンプル数を確保するため,放牧試験前の調査を追加して,その調査時における消耗品および植物サンプルの化学分析費用にあてる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (12件) 備考 (2件)
Grassland Science
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Computers and Electronics in Agriculture
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http://kamuken.boo.jp/KawamuraK/
http://home.hiroshima-u.ac.jp/kamuken/index.html