研究課題/領域番号 |
26850176
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
萩 達朗 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所・畜産物研究領域, 主任研究員 (00510257)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 微生物 / 発現制御 / ストレス |
研究実績の概要 |
乳酸菌は酸素や酸など様々なストレスによって活性が低下することから、乳酸菌の効率的な利用のためには活性の低下を防ぐストレス耐性機構の解明が重要である。そこで本研究では、カロテノイドを中心とした乳酸菌のストレス耐性機構を解明するため、カロテノイド高生産条件で誘導される乳酸菌の遺伝子をホールトランスクリプトーム解析で網羅的に解析した。具体的には、Enterococcus gilvusを好気培養および嫌気培養(静置培養)し、両条件からRNAを抽出した。これらについてシークエンスライブラリ調製を行い、次世代シーケンサ(Illumina Hiseq)を使用して塩基配列データを取得した。得られたデータについてフィルタリング・マッピング処理を行い、好気培養条件で発現量が増加した遺伝子を抽出したところ、カロテノイド生合成遺伝子の発現量が増加しただけでなく、その上流にあるイソプレン合成経路を構成する多くの遺伝子が、好気培養によって発現量が増加することが確認できた。これらの遺伝子発現量について、定量PCRによって再現性を確認したところ、好気培養することで、メバロン酸合成に関わるHMG-CoA reductase、イソプレノイド合成に関わるmevalonate kinase、phosphomevalonate kinase、mevalonate diphosphate decarboxylase、isopentenyl-diphosphate delta-isomerase type 2 、geranyltranstransferaseをコードする遺伝子の発現量が上昇することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
好気培養したEnterococcus gilvusをホールトランスクリプトーム解析し、好気条件で変動する遺伝子を網羅的に解析することで、カロテノイド生合成遺伝子だけでなく、その前駆体であるメバロン酸合成経路やイソプレン合成経路を含むイソプレノイド合成経路に関わる遺伝子について、その発現量が増加することが明らかとなった。これらの結果は、乳酸菌において、カロテノイドを中心とした新たなストレス応答機構の存在を示唆するもので、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、Enterococcus gilvusを好気培養および嫌気培養し、各条件間について代謝物質の違いをLC-MS等を用いたメタボローム解析で明らかにする。メタボローム解析で得られた結果とホールトランスクリプトーム解析で得られた結果を統合し、好気培養で影響を受ける代謝経路を明らかにする。さらに、それに関連する主要遺伝子については、定量PCRで遺伝子発現を確認する。得られた結果をとりまとめ、学会等で成果発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ホールトランスクリプトームの結果、カロテノド合成の主要な代謝経路に関わる遺伝子が明確に示せたため、定量PCRによる再現性の確認数が予定より減少した。そのため、PCRに関わる経費分、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ホールトランスクリプトーム解析およびメタボローム解析から、好気培養で変化する代謝経路を推定し、関わる遺伝子の発現量を測定する。その代謝経路には膨大な遺伝子が関与していることが予想されるため、当該助成金は定量PCRに係る経費として支出する予定である。
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