カロテノイドを中心とした乳酸菌の酸化ストレス耐性機構を解明するため、カロテノイド生産乳酸菌Enterococcus gilvusを好気培養した時に変動する代謝産物をメタボローム解析で調べるとともに、昨年度得たホールトランスクリプトーム解析結果を定量PCRで確認し、メタボローム解析との関連性について検討した。ホールトランスクリプトーム解析および定量PCR解析の結果、ピルビン酸からアセチルCoAへの変換に関与するピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体の遺伝子発現量が、嫌気培養に比べ好気培養条件下で著しく上昇した。一方、メタボローム解析の結果、好気培養条件下ではコエンザイムAの生産に必要なパントテン酸やその派生物の増加が確認でき、ホールトランスクリプトーム解析の結果でも、コエンザイムAの合成経路に関わる遺伝子群の一部について、遺伝子発現量が増加傾向であった。昨年度の結果では、アセチルCoAからメバロン酸、イソプレン、そしてカロテノイド合成の一連の過程に関与する遺伝子のほとんどが好気培養条件で上昇し、カロテノイド生産が増加することを示したが、今回の結果を合わせると、ピルビン酸からアセチルCoA、そしてカロテノイド合成までの一連の代謝経路が好気培養で影響を受け、カロテノイド生産促進に繋がっていることが示唆された。
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