研究課題/領域番号 |
26850177
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
山下 恭広 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所畜産環境研究領域, 主任研究員 (60547719)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 微生物発電 / 浮遊 / エネルギー |
研究実績の概要 |
硫黄の酸化還元に関与する硫酸塩還元細菌と硫黄酸化細菌は、硫黄の授受により競合することなく共存可能である。微生物燃料電池ではエアカソード方式が多く用いられているが、カソードからの酸素透過によるクーロン効率の低下が問題となっている。しかし、硫黄酸化細菌による酸素の消費が図れれば、硫酸塩還元細菌による硫化水素生成が促進され電子供給量が増大するものと考えられる。本年度は、硫黄の酸化還元微生物が増殖可能な微生物燃料電池のリアクターの形状を設計した。形状としては浮遊型の装置開発を試みた。このような構造とすることにより、汚水貯留槽等に導入した場合、水位が変動しても電極接触面積が減少しないため出力の低下を防ぐことができる等のメリットがある。試験では、アノード素材にカーボンブラシを採用した。カソードは導電性カーボン粉末、プラチナ粉末、5%イオン伝導性ポリマー溶液を混合してペーストを作製し、ホットプレス機を用いて触媒層をプロトン交換膜に転写した。次いで、テフロン加工済みのカーボンクロスをホットプレスして圧着させMEAを作製した。本電極を浮遊式にするために、発泡スチロールからなる円環形状の浮きに上記のアノードおよびカソードを固定し、下側からアノード、プロトン交換膜およびカソードの順になるように各部材を配置して容器(2Lビーカー)内に浮くような構造とした装置を試作した。微生物燃料電池のアクター形状を設計し試験を行った結果、酢酸を基質とした培地による培養により完全密閉型の装置でなくとも発電が可能であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
硫黄の酸化還元微生物の存在が微生物燃料電池の電子伝達に有利に働くか検証するために、本年度は、硫黄の酸化還元微生物が増殖可能なリアクターの形状を設計することとした。検討を行った結果、完全密閉型の装置でない浮遊式の微生物燃料電池において発電が確認された。このことから、研究はおおむね順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
作製した浮遊式の微生物燃料電池を用いて安定した発電が可能か運転を継続していく。測定方法としては、電圧を連続的に測定するとともに、サイクリックボルタンメトリーによって、電子移動速度を予測し、電極のポテンシャルや内部抵抗などを把握し本実験装置の反応機構の推定を行う。また、電極に増殖した微生物の群集解析を行うことで、電気産生菌の推定を行う。顕著な成果が得られれば、学会発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
繰越金は、研究資材を自作する等の工夫により研究費を効率的に使用して発生した残額である。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究課題の推進のため、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり、物品費、人件費・謝金に使用する。
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