研究実績の概要 |
微生物燃料電池内の電子伝達における中間体は、ナノワイヤー、リボフラビン、シトクロム、キノン、水素など、様々な物質が寄与していると推定されており、硫化水素もその1つと考えられている。また、硫酸塩還元細菌の中には発電細菌としてDesulfovibrio やDesulfobulbus 属細菌が報告されている。一方、金属系素材は微生物との相性が悪いためにアノードとして殆ど使用されておらず、一般的にカーボン系素材が使われている。しかし、代表的な発電細菌であるGeobacter属細菌などは酸化金属を還元する活性を持つことから、金属系素材は微生物発電を促進するポテンシャルを持っていると推測できる。そこで、本研究では耐食性及び導電性に優れているステンレス鋼SUS304を用いて、微生物燃料電池の性能評価を行った。各種アノード(炎酸化ステンレス鋼、未処理ステンレス鋼、カーボンクロス)を用いて出力比較を行った結果、炎酸化ステンレス鋼は未処理ステンレス鋼よりも3倍程度高く、カーボンクロスよりも2~3割高くなることが明らかとなった。ステンレス鋼は主にFe, Ni, Crから成る合金であるが、ステンレス鋼を炎で炙り表面を酸化させることにより、多数の隆起物が形成された。X線回折及びX線光電子分光分析により、この隆起物は主としてヘマタイトと呼ばれる酸化鉄(Fe2O3)から構成されていることが明らかとなった。アノード生物膜の菌叢解析を行った結果、硫黄代謝に関与するDesulfuromonadalesやDesulfobacteraceae、Desulfotomaculumに属する細菌が検出されるとともに、炎酸化ステンレス鋼はカーボンクロスよりもGeobacter属細菌が電極表面に優先化していることが明らかとなった。
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