研究実績の概要 |
自然界でカモによって維持されているインフルエンザウイルスがニワトリへ馴化するメカニズムを明らかにするために、ウイルスレセプター特異性と宿主であるカモとニワトリにおけるレセプター発現を解析した。鳥から分離されるインフルエンザウイルスは、シアル酸とガラクトースがα2,3結合した糖鎖を認識する。ニワトリでの増殖の有無が確認されたさまざまな亜型のウイルスを用いて、多種のシアル酸糖鎖との反応性を糖鎖アレイにより解析した。その結果、カモから分離されたウイルスは、直鎖状で多分岐のα2,3シアル酸糖鎖を、ニワトリから分離されたウイルスは、フコース基および硫酸基を有するα2,3糖鎖に結合し、特異性が異なった。また、これらの特異性の違いは、亜型にかかわらず共通していた。特に、H5亜型のニワトリのウイルスは、フコース基を有するα2,3糖鎖を、H6亜型のニワトリのウイルスは、硫酸基を有するα2,3糖鎖に優位に結合したため、このような宿主レセプターを利用している可能性が明らかとなった。さらに、宿主の糖鎖レセプターの分布を明らかにするために、フコーシル化α2,3糖鎖を認識する抗糖鎖抗体KM-79と、硫酸化α2,3糖鎖を認識する抗糖鎖抗体MECA-79を用いて、ウイルスの増殖部位であるニワトリの気管およびカモの腸管を免疫染色により調べた。ニワトリの気管上皮細胞にKM-93により検出されるフコシル化糖鎖が検出されたが、調べた臓器にMECA-79は結合せず、硫酸化糖鎖が確認できなかった。
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