研究実績の概要 |
Death associated protein (DAPK)ファミリー蛋白質はアポトーシスやオートファジーを制御することが知られている。申請者はこれまで、血管系においてDeath-associated protein kinase (DAPK)ファミリー蛋白質のDAPK3がTNF-αによる炎症性障害を介して高血圧症進展に関わることを明らかにした。DAPK3は消化管の炎症性反応誘導を介して炎症性腸疾患の進展に関わる可能性が十分に考えられるが、これまで全く検討されていない。また、様々ながんにおけるDAPK3の役割についてもほとんど明らかになっていない。そこで本研究ではDAPK3が炎症性腸疾患を制御するメカニズムとがん進展における役割を明らかにすることを目的とする。 本年度は炎症性腸疾患および大腸がんの初期病変として重要な腸上皮細胞の炎症性反応におけるDAPK3の役割を調べた。がん遺伝子H-RasV12を安定的に発現するマウス腸上皮細胞(aMOC1)を作成し、DAPK familyの蛋白質発現およびリン酸化(活性化)解析を行なった。H-RasV12 発現細胞においてDAPK3のリン酸化および各種細胞内シグナル(Akt, ERK, p38など)が有意に亢進した。しかし、DAPKs阻害薬によってこれらの亢進は抑制されなかった。また、炎症性反応時に重要なタイトジャンクション崩壊に及ぼすDAPK3の影響についてTER法を用いて検討した。しかし、DAPK3は炎症時のタイトジャンクション崩壊にはほとんど影響を及ぼさなかった。 大腸以外のがんにおけるDAPK3の役割を検討したところ、肺がん細胞株A549においてDAPK3がRas活性の制御を介して、細胞の増殖および遊走・浸潤を促進し、肺がんの進展に重要な役割を果たすことが明らかになった(2015年、日本薬理学会年会において口頭発表)。
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