本年度は、以下の実験を行なった。 自然免疫シグナルの活性に関与する種々の宿主分子をクローニングし、これらに蛍光タンパク質タグを付し、さらに哺乳類発現プラスミドへと挿入した。具体的には、STAT1、STAT2、STAT3、IRF3、およびNF-kB(p65サブユニット)である。これらをヒト及びマウスに発現させ、細胞質に局在することや細胞外からの種々の刺激に反応し、核内へと局在が移行することを確認した。現在、これらをヒト由来線維芽細胞であるHFF細胞へ導入し、恒常発現細胞の樹立を目指している。将来的には、樹立した細胞へトキソプラズマを感染させ、ステージ変換を誘導させることによってシグナル分子の挙動をリアルタイムで可視化できるシステムを構築する。 前年度は自然免疫シグナルの活性に関与する種々の宿主分子のノックアウトを目的とし、pX330-U6-Chimeric_BB-CBh-hSpCas9へガイドRNA配列を組み込んだプラスミドのヒト線維芽細胞へのリポフェクション法での共導入を試みたが、導入効率が著しく低かった。そこで本年度は、レトロウイルスベクターを利用してCRISPR-Cas9システムをHFF細胞へ導入するため、その実験系の構築を行なった。現在までに、レトロウイルスベクターに遺伝子カセットを乗せることができたことを確認した。今後、本システムを用いて遺伝子ノックアウト細胞を作出していく予定である。 また、トキソプラズマ感染マウス脳のトランスクリプトーム解析や、潜伏感染モデルへのウイルス接種後の脳組織の病理組織学的検査も、今後実施してゆく。
|