研究課題/領域番号 |
26850186
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
岡田 宗善 北里大学, 獣医学部, 講師 (30453509)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 循環器・高血圧 / エンドスタチン / 心筋梗塞 / 心肥大 / 筋線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
本研究ではXVIII型コラーゲン分解産物エンドスタチンの病態心における役割解明のため、細胞や組織の機能変化に着目して基礎的な検討を行い、現在までに以下のような研究成果が得られた。 (A)心筋梗塞モデルより単離した心臓筋線維芽細胞に及ぼすエンドスタチンの影響:ラットの左冠状動脈下行枝を結紮することにより心筋梗塞モデルを作成し、2週間後の梗塞領域からexplant法により筋線維芽細胞を単離培養し実験に供した。この単離筋線維芽細胞に及ぼすエンドスタチンの影響について検討したところ、I型コラーゲン産生には影響を及ぼさないが、細胞遊走と増殖を促進することが明らかとなった。 (B)圧負荷誘発肥大心における心筋細胞のイオンチャネル活性に及ぼすエンドスタチンの影響:モノクロタリン誘発右心肥大モデルラットを作成し、肥大した右心室心筋細胞を単離し実験に供した。モノクロタリン投与により肥大した右心室組織ではT型カルシウムチャネルのmRNA発現が増加していた。またパッチクランプ法を用いて検討したところ、エンドスタチンは肥大した右心室心筋細胞のT型カルシウムチャネル電流を抑制することが明らかとなった。 (C)圧負荷誘発肥大心からの摘出心筋標本の収縮に及ぼすエンドスタチンの影響:モノクロタリン誘発右心肥大モデルラットを作成し、肥大した右心房組織標本と右心室組織標本を実験に供した。肥大した右心房の基礎心拍数及び肥大した右心室の基礎収縮力にエンドスタチン単独処置は影響を及ぼさなかった。 以上の結果は、エンドスタチンの心疾患における病態生理的役割を解明するにあたっての基礎的な知見となるため、大きな意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、研究の目的に沿って以下(A)~(C)の研究計画を実施した。 (A)心筋梗塞モデルより単離した心臓筋線維芽細胞に及ぼすエンドスタチンの影響:エンドスタチンが遊走や増殖を亢進するという結果を得ており、順調に実験計画が進展している。現在はエンドスタチンが遊走や増殖を亢進する詳細な機序について引き続き検討中である。 (B)圧負荷誘発肥大心における心筋細胞のイオンチャネル活性に及ぼすエンドスタチンの影響:当初は大動脈狭窄モデルマウスの肥大した左心室心筋細胞を用いる予定であったが、手技の安定化という点で困難であったため、モノクロタリン誘発右心肥大モデルラットの肥大した右心室心筋細胞を用いて実験を行った。その結果エンドスタチンがT型カルシウムチャネル電流を抑制することが明らかとなり、順調に実験計画が進展している。 (C)圧負荷誘発肥大心からの摘出心筋標本の収縮に及ぼすエンドスタチンの影響:当初は収縮力測定に大動脈狭窄モデルマウスの肥大した左心房組織を用いる予定であったが、手技の安定化という点で困難であったため、モノクロタリン誘発右心肥大モデルラットの肥大した右心室組織を用いて実験を行った。また心拍動数の測定には、モノクロタリン誘発右心肥大モデルラットの右心房組織を用いた。これらを用いて実験を行った結果、エンドスタチン単独処置では肥大心筋組織において収縮力、拍動数ともに影響を及ぼさないことが明らかとなり、順調に実験計画が進展している。 以上おおむね実験は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度で得られた結果をもとに、その(A)詳細なメカニズムを解明するとともに、病態におけるエンドスタチンの役割解明のために(B) in vivo心疾患モデルを用いた検討を行う。 (A) 筋線維芽細胞において、エンドスタチンの受容体として知られるVEGF受容体、インテグリンそしてグリピカンなどの各種サブタイプのmRNA発現を明らかにする。次に発現受容体の下流にあるintegrin-linked kinase、focal adhesion kinaseやmitogen-activated protein kinaseなどの細胞内シグナル変化を検討する。さらに各受容体や細胞内シグナルを拮抗薬やsmall interfering RNA (siRNA)を用いて抑制し、筋線維芽細胞の機能・形態変化を司るエンドスタチンの標的受容体やその下流の細胞内シグナルを明らかにする。 (B) RNA干渉法により前駆体であるXVIII型コラーゲン遺伝子発現抑制を介してエンドスタチン発現抑制を行ったときの病態心の機能的・構造的変化について検討を行う。具体的にはXVIII型コラーゲンのsiRNAを心筋梗塞モデルラットまたはモノクロタリン誘発右心肥大モデルラットの頚静脈より注入、もしくは病変部に直接注射し、心臓におけるエンドスタチン蛋白質発現を抑制する。その後以下1)~3)の項目について対照siRNA投与動物と比較検討する。1)心機能や血圧の測定。2)梗塞領域のサイズ、心筋肥大と線維化、エンドスタチンの発現・局在と血管新生、そしてアポトーシスなどの組織学的検索。3)各種心疾患関連因子である収縮蛋白質、心不全マーカー、コラーゲンや炎症性サイトカイン・成長因子などの発現解析。 なお得られた成果は積極的に発表する。
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