研究課題
狂犬病は、狂犬病ウイルス(RABV)の感染によって引き起こされる致死性の人獣共通感染症である。RABVは感染しても宿主が発症するまで中和抗体が産生されない。また、RABVは複製速度が遅い方が早いRABVよりも中和抗体産生能が低く、病原性が高いことが報告されている。従って、RABVは宿主体内で厳密な複製・転写調節を行い、感染を成立させることが予測される。そこで本研究は、RABVの子孫ウイルスの産生に関わるRABVゲノムの新規複製・転写調節機構を明らかにすることを目的とした。RABVの複製に重要な塩基配列は高度に保存されていることが予測される。そこで、データベースに登録されているRABV野外株119検体の全長配列を解析したところ、N遺伝子CDSの5’末端領域とM遺伝子の3’非コード領域にRNA配列が連続的に保存された高度保存領域が同定された。そこで、N遺伝子の高度保存領域に同義変異を加えたRABV変異体を作製し親株と比較したところ、RABV変異体の子孫ウイルス産生量が100倍以上低下した。N遺伝子はウイルスゲノムの3’側にコードされているため、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)の認識に関わる配列をコードしている可能性がある。そこで、luciferase遺伝子の上流にN遺伝子の高度保存領域を挿入したmini genome plasmidと、これに同義変異を加えたplasmidを作製し、RdRp発現ヘルパーplasmidsと共にBHK/T7-9細胞にトランスフェクションし、48時間後のluciferase活性を比較した。その結果、高度保存領域に同義変異を加えることによって、luciferase活性がおよそ70%近く低下した。従って、N遺伝子の高度保存領域は、RdRpの認識に関わるRNA配列をコードしている可能性があり、RABVの複製に重要な領域であることが明らかになった。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件)
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