研究課題
Bartonella quintana(B.q)は塹壕熱の病原体として第一次・二次世界大戦時に兵士に流行した細菌である。人はB.qの唯一の自然宿主であるが,近年では研究用のアカゲザルやカニクイザルからB.qが分離されている。しかしながら,野生ザルにおけるB.qの保有状況や人に対するサル由来株の病原性は全く不明である。平成26年度の当該研究では,青森・山形・和歌山県の野生ニホンザルから血液45検体を採取し,B.qの保有状況ならびに遺伝子性状を検討した。その結果,6検体のニホンザルからB.qが分離された。Multi locus-sequence typing(MLST)法によってニホンザル由来株のSequence Type(ST)を解析した結果,検討した6株はいずれも新規のST22に型別された。MLST法に用いた遺伝子の塩基配列に基づいて,ヒトおよびアカゲザル・カニクイザル・ニホンザル由来株を系統解析したところ,B.qはヒトあるいはサルの種類ごとに分類された。以上の結果から,サルもB.qの自然宿主であることが明らかになったとともに,B.qは宿主動物種とともに進化している可能性が示された。平成27年度には,ニホンザル由来株を用いてヒト赤血球に対する感染性を検討した。蛍光染色した両者を共培養(24・48時間)し,蛍光顕微鏡下で観察した結果,24時間後に菌体がヒト赤血球上に確認された。共培養48時間後にフローサイトメトリ―によって解析した結果,MOI(多重感染度)=1.0における感染赤血球率は6.9%であった。さらに,透過型電子顕微鏡により観察したところ,赤血球内に菌体が確認された。以上の結果から,in vitroにおいてサル由来B.qはヒト赤血球への接着・侵入能を有する可能性が示唆された。最終年度の研究成果については,サル由来株の全ゲノム解析を含め,論文を投稿準備中である。
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Emerging Infectious Diseases
巻: 21 ページ: 2168-2170
10.3201/eid2112.150632