研究課題/領域番号 |
26850189
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
竹前 喜洋 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・インフルエンザ・プリオン病研究センター, 主任研究員 (10584386)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インフルエンザ / 鳥 / 豚 / 温度感受性 / 宿主特異性 |
研究実績の概要 |
本研究は、鳥由来A 型インフルエンザウイルスが豚に定着、維持される為に必要なウイルス側の要因を宿主体温の違いに着目し明らかにすることを目的としている。これまでの研究により、野鳥から分離されたA型インフルエンザウイルスA/teal/Tottori/150/2004(H5N3)(鳥取株)を豚の肺胞上皮細胞で低温条件で継代を繰り返し、低温で高い増殖能をもつウイルスを得ている。平成26年度の研究実績については、以下の通りである。 鳥取株の野生型、低温条件で6代継代後ウイルス、14代継代後ウイルスの全ゲノムを次世代シーケンサーを用いて比較した。その結果、低温順化に伴って、PB2遺伝子に二箇所、PB1遺伝子、PA遺伝子、HA遺伝子及びNP遺伝子に各一箇所ずつ塩基置換の蓄積が認められた。PB2とPA遺伝子には、A型インフルエンザウイルスで保存されていると考えられている非翻訳領域に同義置換が認められた。PB2、PB1及びNPに起きた非同義置換は、リボヌクレオプロテイン(RNP)複合体(RNAポリメラーゼとNPとウイルスRNAの複合体)におけるPB2-PB1結合部位及びNP-ウイルスRNA結合部位であった。これらのアミノ酸置換はウイルスポリメラーゼ活性に影響を与えている可能性がある。HAタンパクに認められた非同義置換は、HA2領域にあり、ウイルスと宿主細胞との膜融合に関与する部位の近傍のため、膜融合活性に関与している可能性がある。鳥取株の野生型遺伝子(8本)及び低温順化株に認められたPB2、PB1、PA、HA、NP遺伝子に各塩基置換を導入したpHW2000プラスミドを作製し、リバースジェネティクス法による野生型ウイルス及び各塩基置換を導入したウイルスの作製を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、鳥取株の野生型及び各塩基置換を導入した遺伝子を持つプラスミド(pHW2000)の作製及びそれらを用いたウイルスの作製を行い、作製したウイルスの温度感受性試験等から各塩基置換がウイルス増殖に及ぼす影響を調べることを計画していた。全てのプラスミドの作製は終了したが、リバースジェネティクス法によるウイルスの作製が完了できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
作製したプラスミドを用いた鳥取株(野生型)の作製を試みたが、ウイルスが回収されなかった。鳥取株は、弱毒型の野鳥由来インフルエンザウイルスであり、リバースジェネティクス法においてphw2000プラスミドのトランスフェクション後に用いるMDCK細胞や発育鶏卵でのウイルス増殖性が低いことが原因の一つであると考えられた。これまでに鳥取株は、高温側(41℃)や鶏由来のLMH細胞等で高いウイルス力価を示すことがわかっているため、トランスフェクション後に加える細胞、温度等について条件を検討する必要がある。ウイルス回収後は、実施計画に基づいて、MDCK細胞や豚肺胞上皮細胞を用いた温度感受性試験により鳥インフルエンザウイルスの低温増殖能や豚細胞での増殖能獲得に関与している塩基置換を決定する。また、RNP複合体を形成するPB2、PB1、PA及びNPに認められた塩基置換のうち、低温増殖能に関与していることが明らかになった変異について、それらがウイルスポリメラーゼ活性に与える影響を調べる。また、鳥取株の作製が困難である場合、同じく野鳥由来A型インフルエンザウイルスで低温順化させた島根株(A/w.swan/Shimane/580/2002(H5N3))について、鳥取株と同様の検討を行う。
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