研究実績の概要 |
本年度においては、犬の炎症性結直腸ポリープ症例のポリープ病変部におけるToll様受容体(TLR)2および4のmRNAの発現部位をin situ hybridization法にて解析し、結腸粘膜上皮細胞ならびに炎症細胞にてその発現を確認した。また、TLR2およびTLR4のmRNAの発現量を健常な犬の結腸と比較したところ、TLR4の発現が優位に増加していることが明らかとなった。この事から、炎症性結直腸ポリープ症例のポリープ病変部においては、浸潤した炎症細胞のみでなく、粘膜上皮細胞においてもTLR4の発現が上昇していることが明らかとなり、粘膜上皮細胞に過剰に発現したTLR4が炎症性結直腸ポリープの病態形成に関与していることが示唆された。この仮説の検証のために、炎症性結直腸ポリープ症例の内視鏡下粘膜生検組織を培養し、様々な細菌抗原で刺激を行った。現在、細菌抗原による刺激後の培養粘膜組織における炎症性サイトカイン(IL-6, IL-8, IL-1b)の遺伝子発現をリアルタイムPCR法にて解析中である。 加えて、炎症性結直腸ポリープ症例のポリープ病変部における腸粘膜バリアの解析を目的として、ポリープ病変部における細胞接着因子(クローディン分子群)の発現解析を免疫組織化学的手法を用いて行った。クローディン-1, -2, -3, -4, -5, -7, -8の発現解析を行ったところ、正常結腸粘膜からポリープ病変部への移行部位にて、クローディン-2の発現の低下を認めた。クローディン-2は上皮細胞間を経由する水分子の動きを制御していることから、結直腸粘膜における水分子の輸送異常がポリープ病変の形成または病態の悪化に関与している可能性が考えられた。
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