研究課題
最終年度においては、炎症性結直腸ポリープ症例の内視鏡下結腸粘膜生検組織を培養し、様々な細菌抗原で刺激を行い炎症性サイトカイン(IL-6, IL-8, IL-1β, TNF-α)の遺伝子発現をリアルタイムPCR法にて解析した。解析の結果、Toll様受容体(TLR)4のリガンドであるLPSによる刺激により、培養粘膜組織におけるIL-6、TNF-αの遺伝子発現量が対照とした健常犬の結腸粘膜組織に比較して有意に増加していた。また、TLR9のリガンドであるODN2006による刺激により、IL-8の遺伝子発現量が健常犬に比較して有意に増加していた。研究期間全体で行った解析は、①炎症性結直腸ポリープ症例のポリープ病変におけるTLR2およびTLR4の局在解析、②炎症性結直腸ポリープ症例の結腸粘膜のTLRの機能解析、③炎症性結直腸ポリープ症例のポリープ病変における細胞接着因子の発現解析の3点が挙げられる。①では、in situ hybridization法を用いて、炎症性結直腸ポリープ症例のポリープ病変部において、TLR2およびTLR4のmRNAの発現量が結腸粘膜上皮細胞ならびに浸潤した炎症細胞で増加していることを明らかにした。②については上記の最終年度の研究結果の通りである(TLR4およびTLR9の反応性の増加)。③については、炎症性結直腸ポリープ症例の結直腸粘膜においては、細胞接着因子であるタイトジャンクションやアドヘレンスジャンクション構成タンパク質の発現が変動していることを予想したが、解析の結果、炎症性結直腸ポリープ症例と健常犬の間で発現量ならびに発現部位の差は認められなかった。上記の事から、炎症性結直腸ポリープ症例の結直腸粘膜では、細菌抗原を特異的に認識する受容体であるToll様受容体(TLR)、特にTLR4の発現上昇、反応性の上昇が病態の形成に関与していることが示唆された。
すべて 2017
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