研究実績の概要 |
平成26年度は、まず、BM-PACとBMMSCのpopulation比較を行った。表面抗原解析ではCD29,44,73,90,105(間葉系細胞マーカー)およびCD34,45(造血幹細胞マーカー)について解析した結果、CD73の陽性率において、BM-PACはBMMSCより有意に高い発現を示した。その他のマーカー発現に差はみられなかった。次に、脂肪、骨、軟骨への多分化能比較を行った。BM-PACはBMMSCと比較し、それぞれの評価方法(Oil Red O,Alizarin Red S,Tluidine Blue染色)に対し、より強く染色される傾向にあり、多分化能においてもBMMSCより優れていると示唆された。我々はすでに増殖能力においてBMMSCよりBM-PACが優れていることを明らかにしており、以上の結果から、BM-PACはBMMSCより優れた間葉系幹細胞であると考えられ、BMMSCとは異なる細胞集団を含んでいることが明らかとなった。BM-PACの再生医療への有用性をさらに検討するため、強い組織再生能力が報告されている幹細胞増殖因子(HGF)の発現について、さらに比較検討を行ったところ、タンパクレベルでのHGF発現はBMMSCよりBM-PACで有意に高かった。そこで、BM-PACにおいて、炎症性サイトカインに対するHGF産生の反応性をみたところ、主要な炎症性サイトカインであるTNF-αの存在下で、HGFの遺伝子発現が上昇することを見出した。すなわち、BM-PACは炎症存在下において、組織修復能力をもつHGFを産生し、組織再生に寄与する可能性が示唆された。今後、ELISAを用いて、HGFの分泌能力を検証するとともに、HGFの有効性が報告されている脊髄損傷をターゲットとし、再生医療への応用を検討する。
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