最終年度は、これまでのBM-PACsの性状解析をBMMSCsと比較した結果をまとめ、報告した。また、BM-PACsの再生医療への応用を検討するため、移植実験を中心に研究を行った。HGFは様々な組織の損傷に対して治癒効果をもたらすこと、また、間葉系幹細胞は損傷部への遊走能を有していることが報告されていることから、皮膚欠損モデルおよび、脊髄損傷モデルに対してBM-PACsを静脈内投与し、損傷部への遊走能および、損傷部でのHGF発現について評価した。蛍光標識を施したBM-PACsをヌードマウス皮膚欠損あるいは脊髄損傷モデルに静脈内投与した後、In vivo imaging system(IVIS)により経時的に観察したところ、投与直後は肺に留まるものの、その後全身循環し、肺以外に肝臓・脾臓で蛍光が観察された他、移植後1週間で損傷部での蛍光も観察された。投与後3週間で、蛍光の検出は認められなくなったが、8週後に犠牲死した後に摘出した脊髄では蛍光が観察された。組織学的にも蛍光を保持する移植細胞とみられる細胞が損傷組織中でみられ、HGFの発現も観察できた。今後、損傷治癒や運動機能改善への効果を検討し、有効性の評価をさらに重ねる予定である。 また、犬で同定されたBM-PACsが他の動物においても存在しうるかを検討するため、猫、豚、ラットの骨髄より、犬と同様の分離・培養法でBM-PACsが得られるかを検討した。結果、すべての動物で犬と同様の多分化能を示す細胞が得られ、哺乳類の骨髄の脂肪細胞周囲には共通して間葉系幹細胞が存在することが示唆された。
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