獣医療で問題となるメチシリン耐性Staphylococcus pseudintermedius (MRSP)は、SCCmec II-IIIをもつST71が欧州から世界的に拡大している。日本の犬から分離されたMRSPも欧州株と同じSCCmec II-IIIをもつ株が多かったが、性状に多様性が認められたため、日本のMRSPの起源を明らかにするため、遺伝子解析を行った。SCCmec II-IIIをもつ日本のMRSPは、欧州株と同じST71に加え、ST71と関連するST169およびST354に型別された。欧州および日本のMRSP ST71は、テトラサイクリン耐性遺伝子tetMを持たなかったが、日本のMRSP ST169およびST354の大半が同じ塩基配列のtetMを保有し、tetM獲得後、ST169およびST354は分布を拡大したと考えられた。 メチシリン耐性遺伝子カセットSCCmecは、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)を起源とすると考えられているため、犬から分離したメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCNS)のSCCmecの塩基配列を解析した。MRSPのSCCmec II-IIIに類似するSCCmecと考えられた4株のSCCmecの配列を決定した。うち1株は、MRSPのSCCmecに6 kbの遺伝子群が挿入された構造で、MRSPと最も類似したSCCmecを保有していた。 MRSPとMRCNSのSCCmecを比較するため、dru typeを決定した。日本の犬由来のSCCmec II-III型MRSPの多くがdt9aに分類され、MRSPと最も類似したSCCmecを保有していたMRCNSはdt9aから繰り返し配列が一つ欠損したdt8bに分類された。dru typeは短い配列の決定で型別出来るため、SCCmecの比較に有用な遺伝子と考えられた。
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