研究課題/領域番号 |
26850196
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
北口 公司 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (50508372)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 食物繊維 / アレルギー / 炎症 |
研究実績の概要 |
水溶性食物繊維であるペクチンを摂取することでアレルギー病態が緩和されることが示唆されている。本研究では,ペクチンが有するアレルギー抑制機序を解明し,アレルギー治療補助食あるいは機能性食品としてのペクチンの応用の可能性を検討する。 (1)ラット好塩基球細胞株RBL-2H3にペクチンを添加し,高親和性IgE受容体(FcεRI)架橋刺激による脱顆粒を誘導した結果,ペクチン添加により顆粒放出率が有意に低下した。さらに,このペクチンによる抑制はFcεRIシグナル伝達経路の上流に作用していることが示唆された。 (2)マウスマクロファージ様細胞株RAW264.7細胞へペクチンを添加し,抗原取り込み能ならびにサイトカイン発現量を測定した。抗原タンパク質の取り込み量にペクチンは影響を及ぼさなかったが,炎症性サイトカインのIL-6産生量がペクチン添加により有意に抑制された。 (3)ペクチンの主鎖を分解,あるいは酸加水分解し低分子化したペクチンを調製し,RAW264.7へ添加したところ,これらの低分子化ペクチンでもIL-6産生の抑制活性が保持されていた。 (4)卵白オボアルブミン(OVA)を抗原として,経口免疫寛容を誘導したマウスにペクチンを給餌し,OVA特異的IgGならびにIgE抗体価を測定した。経口免疫寛容誘導下では,ペクチンの摂取による影響は見られず,抗体価は対照群と同程度であった。一方,敗血症モデルマウスではペクチン給餌により炎症性サイトカインのIL-1βとIL-6の産生量がペクチンの摂取により低下する傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今後,より詳細なペクチンの炎症抑制活性部位の同定を進め,動物生体内でのペクチンの作用機序を解明するための重要な以下の2つの知見が得られたため。 (1)ペクチンがTh2型サイトカインの産生を抑制していることが既に報告されているが,エフェクター細胞であるマスト細胞や好塩基球にも抑制作用が見られたため,感作の有無によらずアレルギー治療補助食品としてペクチンを利用できる可能性が示された。 (2)低分子化ペクチンでもサイトカイン抑制活性が保持されていたため,機能性食品素材として利用する上で利点となりうる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果から,ペクチン分子内の特定の多糖構造を細胞が認識し,アレルギーや炎症応答を抑制している可能性が示唆された。そこで今後は,ペクチン分子内の抑制活性本体を同定し,細胞がどのようにこの構造を認識・応答しているのかを明らかにする。さらに,受動性アナフィラキシーモデルを作成し,ペクチンの経口投与が,エフェクター細胞機能を調節し,アナフィラキシーショックを抑制することをin vivoで証明する。 また,アレルギーのみならず敗血症モデルにおいても,ペクチンが病態を緩和することが示唆されたことから,急性炎症におけるペクチンの抑制機構も解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に培養細胞による解析を進めたため,実験動物の購入費用を節約できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究費は,当初の予定通り主に動物実験に関わる物品の購入に使用する。今年度未使用分も含めて,アナフィラキシーモデルや敗血症モデルなどの病態解析に使用する予定である。
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