研究実績の概要 |
近年、術前から実施できる周術期体温保持法として、アミノ酸輸液が有効であることが報告されており、周術期低体温のコントロールのため、人患者に対してはアミノ酸輸液が活用されている。ラットおよび犬においても、アミノ酸輸液によりインスリンが誘導されることが確認されている。しかしながら犬において、インスリンがアミノ酸輸液による体温低下抑制に及ぼす影響は検証されておらず、アミノ酸輸液とインスリンの直接的な関係は不明である。そこで、インスリンがアミノ酸輸液による体温低下抑制に及ぼす影響を明らかにするため、オクトレオチド(ソマトスタチンアナログ)を用いた研究を行った。オクトレオチドはインスリン分泌を抑制する作用があるため、アミノ酸輸液によって誘導されるはずのインスリン分泌を抑制することができると考えられる。まず、オクトレオチドの作用を検証するため、オクトレオチドを覚醒時の犬に投与したところ、糖負荷直前のインスリン分泌が抑制された。さらに、麻酔下の犬にオクトレオチドを投与したところ、麻酔導入から50~90分後、アミノ酸輸液による体温低下抑制効果が減弱した。また、麻酔導入1時間前および麻酔導入から0,1時間後のインスリン分泌が抑制された。以上より、覚醒下の犬において、オクトレオチドによりインスリンの基礎分泌およびグルコース応答性分泌が抑制されることが明らかとなった。また、犬のアミノ酸輸液による体温低下抑制効果には、インスリンが介在していることが示された。
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