研究課題/領域番号 |
26850197
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
柴田 早苗 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20588917)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 周術期低体温 / 犬 / アミノ酸輸液 |
研究実績の概要 |
小型犬や猫は体重あたりの体表面積が大きい。麻酔時には、体温中枢が抑制されることなどから、熱産生と熱喪失のバランスが崩れ、容易に低体温に陥ることが知られている。そのため、周術期低体温を抑制する方法を開発すべく、本研究に取り組んできた。人では、周術期低体温をコントロールするためにアミノ酸輸液が実施されている。人や齧歯類における研究から、アミノ酸輸液による周術期低体温予防効果は、インスリンが直接的に関与していること・アミノ酸輸液が体温中枢に直接的に作用していることが示唆されている。我々がこれまで実施してきた犬における研究においては、アミノ酸輸液により麻酔中の体温低下を抑制できることが示されており、これにはインスリンが関与している可能性がある。本研究では、前年度にインスリンがアミノ酸輸液による体温低下抑制に直接的に関わっているかどうかを検証した。インスリン分泌を抑制するオクトレオチド(ソマトスタチンアナログ製剤)を投与し、麻酔中の犬に対してアミノ酸輸液を実施したところ、体温低下抑制効果が減弱する結果となった。このことから、アミノ酸輸液による体温低下抑制にはインスリンが深く関わっていることが示された。今年度は、インスリン分泌を誘導する可能性のある非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を投与した場合に、アミノ酸輸液による体温低下抑制をさらに増強するかどうかを検証した。その結果、NSAIDsはアミノ酸輸液の作用に影響しないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までの研究では、インスリンがアミノ酸輸液による体温低下抑制に直接的に関わっているかどうかを検証した。インスリン分泌を抑制するオクトレオチドを投与し、麻酔中の犬に対してアミノ酸輸液を実施したところ、体温低下抑制効果は減弱した。このことから、アミノ酸輸液による体温低下抑制にはインスリンが深く関わっていることが示された。獣医領域では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)がよく使用されている。NSAIDsには、インスリン分泌を促進する可能性があり、 アミノ酸輸液と併用した場合に、その体温低下抑制作用をさらに増強する可能性が考えられた。アミノ酸輸液による低体温対策を臨床応用する上では、NSAIDsとの相乗相加作用を十分に検証しておく必要があった。そこで、今年度はNSAIDsをアミノ酸輸液と併用した際の麻酔中体温変化を検証することとした。これは当初計画には記載されていない研究であったため、本年度の計画が遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は臨床例にアミノ酸輸液を実施し、臨床データを集積していく予定である。現在、臨床試験は比較的順調に進行している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度には、これまでの研究計画に内容を追加して研究を実施した。具体的には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)にはインスリン分泌を促進する可能性があり、アミノ酸輸液と併用した場合に、その体温低下抑制作用をさらに増強する可能性が考えられた。そのため、アミノ酸輸液による低体温対策を臨床応用する上では、NSAIDsとの相乗相加作用を十分に検証しておく必要があった。そこで、今年度はNSAIDsをアミノ酸輸液と併用した際の麻酔中体温変化を検証することとした。これは当初計画には記載されていない研究であったため、本年度の計画が遅れる結果となった。その結果、当初予定よりも進行が遅れており、残額が発生する事態となってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度には、最終年度として、臨床例へのアミノ酸投与試験を実施する計画である。統計学的に十分量の症例数を集積し、年度中にデータをまとめる予定である。研究費は輸液剤や試薬類の購入費用に使用する予定である。
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