関節軟骨疾患は獣医療に限らず、ヒトの医療でも大きな問題となっている疾患である。そしてその治療に再生医療の応用が期待されている。関節軟骨の構成成分である硝子軟骨は培養過程で終末分化を引き起こし、最終的にはアポトーシスにいたる。硝子軟骨の維持にはPTHrPの関与が考えられている。軟骨膜はPTHrPを分泌することが報告されているので、軟骨膜誘導した細胞シートは硝子軟骨再生に有用である可能性が考えられる。そこで、本研究では軟骨膜誘導細胞シートの関節軟骨再生に対する有用性を検討することを目的とした。 本研究では大型動物であるウシを用いることとした。ウシはマウス等実験動物と比較して骨格系の大きさがよりヒトに近く、特に膝関節構成骨はヒトのものに大きさが近いため、本研究で得られる知見は獣医領域に限らず、医学領域に対しても有効な知見になると考えられる。しかしながら、ウシ由来の細胞を用いた細胞シートの報告は現状では少ないため、基礎的検討から開始する必要があると考えられた。 本年度はウシ骨髄由来間葉系幹細胞を用いた細胞シートを用い、in vitroならびに屠体を用いた、細胞シートの強度、軟骨膜誘導細胞シートのPTHrPの分泌能の検討を行う予定であった。しかしながら、これまでにヒト等で報告されている手技では細胞シートの作製がうまくいかず、しっかりとした強度を持つ細胞シートの作製が困難であった。そのため、ウシの細胞を用いて細胞シートを作製するには、従来報告されているものとは条件が異なる可能性が考えられた。現在は培養期間、試薬の濃度の調整などを行い、少しずつではあるが、シートの作製が安定してきている状況である。
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