研究課題/領域番号 |
26850198
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
都築 直 宮崎大学, 農学部, 助教 (60725430)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 再生医学 / 関節軟骨 / 牛 |
研究実績の概要 |
本研究は関節軟骨再生に対する、間葉系幹細胞より作製した細胞シートの有効性を明らかにすることを目的としている。当該分野はマウス等の実験動物での知見は多いが、大型動物での検討が進んでいないため、本研究は牛を用いた研究を計画している。 昨年度は牛由来細胞を用いた細胞シートを安定して作製できないという問題があったため、本年度は研究の遂行のために、まず細胞シートの作製を安定させることを第一に実施した。試薬や培養条件の詳細な見直し、そして検証をした結果、細胞シートの作製はほぼ確実に成功することができるようになった。しかしながら、①作製した細胞シートの強度が想定していたよりも低かった、②細胞シートの分化誘導を計画していたが、分化誘導を行うとシート形状を維持できない、③シートは高濃度の活性酸素に曝されるとシートの形状を維持できない、④細胞シート作製までの期間が長く、その期間もばらつきが大きいため移植の時期を計画できないといった問題が明らかとなった。当初は分化誘導した細胞シートを移植することで有効性を明らかにしようと考えていたが、①、②の理由により、計画を大幅に変更する必要があると考えられた。また、③、④は今後の臨床応用に対して大きな問題になると考えられた。特に関節軟骨の損傷による関節炎時には関節内には多量の活性酸素が生じていると推定されているため、解決しなくてはならない重要な課題であると考えられる。 ①に関しては積層シートの有効性が示されている。このため、②、③、④の解決が今後重要であると考えられる。②に関しては、簡便かつ低コストで用いられるサイトカインの開発が有用であると考え、本年は簡便かつ低コストでサイトカイン源である多血小板血漿を作製できる手技の開発を行った。本年は残る問題となる③、④の解決に主眼を置き、研究を進めたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、細胞シートを分化誘導し、関節軟骨欠損部位へと移植し、その有効性を評価するということを計画していた。しかし、細胞シートの強度が低い、細胞シートはシートの形状を維持したまま分化誘導ができないことが明らかとなった。また、分化誘導のほかに、活性酸素が細胞シートの形状維持に悪影響を与えることが明らかとなった。活性酸素は関節軟骨再生が必要とされる関節炎時に関節腔内で多量に発生すると推察されている。このため、単純に細胞シートを関節軟骨欠損部に移植するのでは効果は見込めないと考えられた。これらの問題を解決するため、研究計画の大幅な見直しが必要とされたため、現在は見直した研究計画を進めている段階である。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、細胞シートは積層化、分化の問題はサイトカイン等の応用で解決可能であると考えられる。今後は、他の問題となり、臨床上応用に当たり、もっとも問題となるであろう、関節腔内の高濃度活性酸素への対処、細胞シート作製期間の短縮化の方策をまず明らかにすることを行う。これらの問題が解決したのちに、細胞シートの関節軟骨再生への有効性の検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画を大幅に見直す必要があったため、本年計画していた生体を用いた研究を実行することができなかった。そのため、生体の購入に関わる費用を使えなかったため、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
見直した研究計画で、新たに測定をしなくてはならない項目の測定には多額の費用がかかると推測される。このため、本年の残額はこの測定に大部分が使われると考えられる。
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