研究課題/領域番号 |
26850198
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
都築 直 宮崎大学, 農学部, 助教 (60725430)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞シート / 活性酸素 / 関節炎 |
研究実績の概要 |
本研究は関節軟骨再生に対する、間葉系幹細胞より作製した細胞シートの有効性を明らかとするために計画をした。本分野はマウス等実験動物での研究は盛んに行われているが、大型動物での検討は進んでいない。ヒトへの応用を考えた場合、力学的強度等の問題点を洗い出すためにも、大型動物での検討は必要であるといえる。このため、本研究はウシでの検討を計画していた。 一昨年度の研究により、ウシの細胞シートの作製には多くの問題があることが明らかとなった。この中で、活性酸素に曝されると細胞シートが崩壊するという現象が確認された。関節軟骨損傷時には、関節炎が発生していると推察される。炎症部位には活性酸素が多量に発生していると考えられているため、細胞シートを関節炎部位にそのまま移植しても、短期間の間に移植した細胞シートが崩壊する可能性が推察された。しかしながら、大型動物における関節炎時の活性酸素の発生状況の報告は少ない。そのため、ウシと同様の大型動物であり、関節炎の発生頻度の高い動物であるウマの関節炎時における活性酸素の発生状況の評価を行った。 片側性の手根関節構成骨の剥離骨折を発症し、関節軟骨の損傷と、関節炎の症状を示すサラブレッド種ウマ19頭から関節液を採取した。健康側もコントロールとして採取した。得られた関節液から、活性酸素の産生状況の指標であるd-ROMsならびに、関節液の活性酸素除去能の指標であるBAPを測定した。その結果、剥離骨折発症をしている側の関節液では活性酸素の産生が有意に増加しており、活性酸素の除去能も有意に低下していることが明らかとなった。この結果から、関節軟骨の損傷があり、関節炎が存在する状況では活性酸素が多量に発生しており、この状況を解決することが、細胞シート移植前に必須であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度の研究成果により、昨年、研究計画の大幅な見直しを行った。その結果、新しい研究計画は、関節炎時の活性酸素の発生状況の調査、細胞シート作製にかかる期間の短縮という2点に主眼を置く計画とした。本年度は新計画の第一の目的であった関節炎時の活性酸素の発生状況の調査が完了したため、概ね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、関節炎時には関節液に多量の活性酸素が発生していることが明らかとなった。細胞シートは活性酸素に非常に弱いことが一昨年度の研究で明らかとなっているため、細胞シート移植には、この状態の改善が必要であるといえる。今後は関節炎時における、活性酸素の発生を抑える手法の開発を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年内に全予算を使用することが見込まれていたが、想像以上に順調に結果が出たため、一部試薬の購入が不要となったため、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度の成果を論文にするために、投稿費に一部使用しようと考えている。残額にて次の研究、すなわち関節炎時の酸化ストレス軽減手法の確立を進めたいと考えている。
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