黒毛和種繁殖雌牛では、分娩後の早期に妊娠を成立させることが生産性の向上に重要である。本研究では、子宮疾患が原因で長期不妊であると診断された黒毛和種繁殖雌牛に対して超音波画像検査および試験的子宮洗浄を行い、子宮内の炎症反応と細菌感染状況について調査を行った。 1つの農場で飼育されている黒毛和種繁殖雌牛で、分娩後120日以上が経過しても妊娠していない28頭の内、卵巣疾患(卵巣静止および卵巣嚢腫)が原因と考えられるものを除いた18頭(平均5.9±2.0歳、3.2±1.4産)で、分娩後日数は145.6±19.0日であった。生殖器の検査は膣鏡検査による膣内膿瘍物の有無、超音波画像検査による子宮角分岐部の外径、子宮内膜の高輝度領域および子宮内腔の貯留物の有無、子宮動脈血流量の測定を行った。同時に生理食塩水100mlで子宮内を洗浄し、灌流液について細菌培養および沈渣の細胞分析を行った。 膣鏡検査により膣内に膿瘍物の貯留が認められた牛は2頭(11.1%)で、全頭で左右の子宮角外径および子宮動脈血流量に左右差は認められず、子宮内膜の高輝度領域は13頭(72.2%)、子宮内腔の貯留物は15頭(83.3%)に認められた。子宮灌流液に混濁が認められた牛は13頭(72.2%)で、細菌培養検査では5頭(27.8%)より細菌(E.coli:2頭、S.gallinarum:2頭、Trueperella pyogenes:1頭)が分離された。灌流液の沈渣では、多核白血球数が30.3%と単核白血球の7.2%に比較して高値を示した。 本研究の結果、卵巣疾患に起因しない長期不妊牛では超音波画像検査の結果から子宮内膜の高輝度領域や内腔への貯留物が多いことが明らかとなった。一方、子宮内からの細菌分離率は30%未満であったことから、細菌感染の有無にかかわらず子宮内膜の炎症が持続することで不妊となっている可能性が示唆された。
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