研究実績の概要 |
潜在精巣は、胎生期に腎臓直下で形成された片側または両側の精巣が陰嚢内に下降せず、腹腔内や鼠径部に停留する疾患であり、これらの領域に留まった精巣では精子形成は認められないことから、両側性の場合は生殖不能となる上、潜在精巣における精巣腫瘍の発生率は極めて高く、臨床上大きな問題となる。潜在精巣の発症には遺伝的な関与があるとされているが、その遺伝的背景の詳細は明らかにされていない。本研究では、精巣の下降過程において重要な役割を果たしていると考えられている、Relaxin/insulin-like family peptide receptor 2 (Rxfp2) 遺伝子に対して、健常犬(n = 6-8)と潜在精巣罹患犬(n = 6-8) 間の一塩基多型 (SNPs ) の比較により、潜在精巣の発症に関与するSNPs変異を探索することが目的となる。 本年度は、前年度以前からの継続として、Exon 9からIntron 9、Intron 11からIntron 12内に存在するSNPs変異に関して、遺伝子変異検出キット(SURVEYOR, Transgenomic社) を用い、アガロースゲル電気泳動にてDNA切断断片解析を行い、潜在精巣の発症に関連しうるSNPsの有無について、スクリーニング解析を実施した。結果として、Exon 9からIntron 9およびIntron 11からIntron 12の各領域において、健常犬と潜在精巣罹患犬のDNA切断断片に大きな相違はなかったことから、これらの領域において潜在精巣に関連するSNPsが存在しないことが推察された。
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