研究課題/領域番号 |
26850203
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
小西 美佐子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門 ウイルス・疫学研究領域, 主任研究員 (20355168)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 初乳抗体 / 牛白血病ウイルス / IgG精製 |
研究実績の概要 |
1. 泌乳期間による乳汁中抗体力価の変動調査 泌乳期間による乳汁中の抗BLV抗体価の経時的変化を調査するため、BLV感染牛6頭および非感染牛4頭より、乳汁および血液を採材した。乳汁は分娩後1~14日目および1ヶ月目から乾乳までの1ヶ月毎、1回/日50mlを、血液は分娩1ヶ月前から乾乳まで、1ヶ月毎に採材した。乳汁を粗遠心後、上清をさらに超遠心処理して得られた乳清を用いてシンシチウム形成抑制能試験(SIA)により、抗BLV抗体力価を測定した。また、市販のエライザキットを用い、IgG濃度の変動を調べた。さらに、粗遠心後の沈査からDNAを抽出し、PCRにより体細胞中のBLV遺伝子を検出した。血清およびWBC中DNAは、乳清と同様に抗体力価測定ならびにBLV遺伝子検出を実施した。 超遠心処理により乳清中の夾雑物が減り、非特異的な細胞傷害活性が軽減され、SIAの判定が容易となった。感染牛の抗BLV抗体価には個体差が認められたが、いずれも初乳中抗体価が血中抗体価より高かった。また、血中抗体価は経時的に変動しなかったが、乳中抗体価およびIgG濃度は分娩後5日目以降大幅に低下し、血中抗体価よりも低くなった。BLV感染牛の乳汁中体細胞からは、最長で分娩後14日目までBLV遺伝子が検出された。一方、WBCは全検体からBLV遺伝子が検出された。非感染牛は、全て抗BLV抗体およびPCR陰性であった。
2. 乳汁からのIgG精製法の検討(Large scale) 大容量の乳汁からIgGを精製する方法を検討するため、BLV感染牛3頭より、分娩後1回目の初乳各3Lを採材した。超遠心処理が不可能なため、高速遠心処理により得られた乳清を用いて硫安沈殿法を実施したところ、夾雑物が多く、そのままではカラム精製実施不可能であった。そこで、乳清をろ過し、ゲル濾過を行った後、市販のアフィニティーカラムによる精製を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、乳汁中抗体によるBLV感染抑制能の評価法確立を計画していたが、乳汁提供元においてBLV感染牛の淘汰計画が進められたため、今後の実験に必要となる乳汁中IgGを先に確保しておく必要が生じた。そこで計画を変更し、H27年度中に分娩予定のBLV感染牛の初乳を全量採材し、大容量の乳汁からのIgG精製法検討を実施した。一方、前年度確立したものの、非特異的な細胞障害性活性が問題となっていたSIA法については、乳清を超遠心処理することにより、判定が容易となった。また、最終年度(H28年度)に実施予定であった乳汁中IgG濃度測定を開始した。今年度の研究成果により、感染牛の初乳中抗体によるBLV感染防御能が強く示唆された。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は、乳汁中抗体によるBLV感染抑制能の評価法確立を試みる。具体的には、BLV持続感染細胞の感染能は維持したまま、細胞の自己増殖能を消失させるためのマイトマイシンC処理条件を検討する。また、BLV持続感染細胞の培養上清から精製したBLVを抗原としたウエスタンブロット法により、乳汁中IgG抗体の標的蛋白質の解明を試みる。
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